【感染症ニュース】梅毒進行で立てない・真っ直ぐ歩けない… 41週までの累積報告11,852人 10-20代女性は注意(一部再掲)

昨年を上回るペース

国立感染症研究所によると、2023年第41週(10/9-15)には、全国で191人の感染が報告されています。今年に入ってからの累積報告数は、11,852人になりました。
2022年の国内の梅毒の感染者数は、過去最多の12,966人でしたので、今年は、上回る勢いとなっています。佐賀県・宮崎県・香川県では、既に過去最多を更新しています。梅毒とは、性的な接触(他人の粘膜や皮膚と直接接触すること)などによってうつる感染症です。原因は梅毒トレポネーマという細菌で、その病名は、症状の一つである赤い発しんがヤマモモ(楊梅)に似ていることに由来しています。

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梅毒の症状は?

梅毒に感染すると、性器や口の中に小豆から指先くらいのしこりができたり、痛み・かゆみのない発しんが手のひらや身体中に広がることがあります。また、これらの症状が消えても体内には病原体が残っているのが特徴で、治療しないまま放置していると、数年から数十年の間に心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、時には死に至ることもあります。

感染症の専門医は…

感染症の専門医で、大阪府済生会中津病院の安井良則医師は、「先日、梅毒に感染している方の診察結果をみる機会がありました。症状は、立てない・真っ直ぐに歩けないなどの症状があり、神経梅毒の疑いがあります。詳細な検査はこれからとのことですが、髄液の中にも梅毒の細菌が検出されていますので、おそらく最初に症状が出てから何年も治療を行わなかった可能性があります。こうした患者の方は最近では珍しいですが、梅毒の流行が広がることで、中には重症の患者が増えてくる可能性もあり、注意が必要です」としています。(※神経梅毒・・・梅毒トレポネーマが中枢神経系に浸潤した状態であり、どの病期でも起こりうる。早期神経梅毒には、無症候の場合と、髄膜炎や脳梗塞等を呈する場合がある。更に、晩期神経梅毒に至ると、脊髄癆(せきずいろう…歩行障害や感覚障害など中枢神経系等の慢性疾患)や進行麻痺(記憶力の衰えなど認知症のような症状を呈する)

男性だけではなく女性も。10代20代の報告数では、女性が男性を上回る

昨年の第1〜44週の統計で見ると、感染者の男女の比率は、およそ7対3。年代別では、20〜50代の男性、20代の女性の感染者数が多く、30代以降は男性が多いものの、10代20代では女性が上回っています。

妊娠中の感染は特に危険

また、安井医師は若い女性の感染者が多いことについて、「妊娠している人が梅毒に感染すると、母親だけでなく、胎盤を通じて胎児にも感染することがあります。その結果、死産や早産になったり、生まれてくる子どもの神経や骨などに異常をきたすことがあるので、注意が必要です。生まれた時に症状がなくても、遅れて症状が出ることもあります。これから、妊娠・出産を考えている方で、感染の予防や、感染への不安がある方は、検査をして早期発見を心掛けてください」としています。

梅毒の検査は医療機関や保健所などで

梅毒の検査は、一般的には医師による診察と血液検査(抗体検査)で判断されます。地域によっては、保健所などで匿名・無料で検査できるところもあるので、感染が気になる方は相談してください。

梅毒は治る病気。適切な治療を

かつては治療薬がなく、死に至る病気とおそれられていましたが、ペニシリン系の抗菌薬が開発されてからは、治療が可能となりました。通常は内服薬が処方されますが、症状が良くなっても病原体は体内に潜み続けるので、医師の許可が出るまでは薬を飲み続ける必要があります。

予防にはコンドームの使用を。しかし、過信は禁物

梅毒は性交渉などで、感染部位と粘膜や皮膚が直接接触することでうつります。予防のためにはコンドームの使用が進められますが、100%予防ができるわけではありません。また、完治しても再び感染する可能性があるので、予防については、常に気を使うことが重要です。

引用
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報 2023年30週
厚生労働省HP 梅毒

取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 安井良則氏

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