サル出没、作物に被害 茨城県内 専門家「近づかないで」

大子町に出没したサル(同町提供)

本州で唯一、野生のサルの群れが生息していないとされる茨城県で、住民からサルの目撃情報が相次いでいる。県北地域では農作物や家庭菜園が荒らされる被害も発生。隣接県の群れから離れたニホンザルの雄の可能性が高いとみられ、過去にはサルに襲われる被害も。専門家は「遭遇しても近づかず、目を合わせないで」と注意を呼びかけている。

県によると、本年度のサルの目撃情報は128件(今月20日現在)に上り、過去最多だった昨年度の153件をやや上回るペースで推移。発見場所は25市町村と幅広い地域に及んでいる。県は2020年度以降、自治体からの情報を集約しているが、実際の目撃情報はさらに多いとみられる。

サル出没によって、家庭菜園や農作物などにも被害が現れ始めており、畑のジャガイモを掘り返したり、自宅庭に植えた草花の球根などが食べられる事例が報告されているという。

今年4月にサルの目撃が相次いだ大子町の斉藤光代さん(74)は、自宅の庭に植えたクロッカスの球根を20個ほど食べられてしまったという。斉藤さんは「大子出身だが、これまではサルが出るとは聞いたことがなかった」と話した。

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、つくば市)は、茨城県周辺では群れの活動が確認されていないことから「県内に多くのサルが入ってくることは考えにくい」とみている。

環境省の調査では、茨城県は本州で唯一、サルの群れが生息していない地域。茨城県で目撃されるサルについて、日立市かみね動物園の生江信孝園長は「栃木県や福島県の群れを離れた『はぐれザル』ではないか」と指摘した。

生江園長や県によると、ニホンザルは雌が群れにとどまる「母系集団」。雄は成長すると群れを離れ、他の群れに合流することから、茨城県で目撃されるのは別の群れを探す個体とみられる。サルを遠ざけるには家の周りに食べ物を置かず、遭遇した場合は、目を合わせないことが重要という。

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