仮想空間に“まるごと静岡県” 災害状況確認や「J-クレジット」施策に活用

先進的なテクノロジーとインフラ整備に関するセミナー「3次元空間情報基盤によるインフラモニタリングの最前線」が23日、東京・日本橋で開かれ、静岡県が取り組む「VIRTUAL SHIZUOKA(バーチャルシズオカ)」が関心を集めた。

バーチャルシズオカとは、レーザー測量などで空間や色の情報を持つ「3次元点群データ」を集めて、仮想空間に県のほぼ全域の風景や地形を3Dモデルで再現するプロジェクト。膨大な量のデータが誰でも利用できるオープンデータとして公開されている。

静岡県交通基盤部の増田慎一郎氏は講演を行い、バーチャルシズオカの活用事例を紹介した。デジタルツイン(現実の双子)の特徴を生かして、バスが細い道を通れるかをシミュレーションしたり、ビデオゲームを開発するツール、ゲームエンジンと点群データを組み合わせて県内を自由に飛び回るような観光映像を作れたりできると述べた。

また、温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジット化して取引する国の制度「J-クレジット」を利用する日本製紙が、富士市の社有林の測量にバーチャルシズオカを活用したと話した。実際に担当者が森林に入って樹木を調べるのではなく、航空機によるレーザー測量で調査することで作業の手間を減らせたという。

大阪経済大学の中村健二教授=23日、東京・日本橋

バーチャルシズオカは台風の被害状況を調べる際に活用されているが、点群データに詳しい大阪経済大学の中村健二教授は「点群データは点の集合体。人間の目には道路や、のり面(山林などの人工的な斜面)に見える3Dモデルでも、コンピューターには(3Dモデルが何を意味しているか)分からない」と指摘。災害の前後で、何が、どのように変化したかをコンピューターが自動的に“理解”できるようになれば、国が被災状況を確認して復旧にかかる費用を決める災害査定のスムーズ化に役立つと話した。

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