【野球】“勝ち点獲得で優勝” 最高の舞台は整った、廣瀬世代の集大成を/早大戦展望

ここまで4カードを終え、勝ち点4勝率.800で首位に位置している慶大。リーグ戦は早慶戦以外のカードが終了し、優勝可能性はついに慶大と早大のみとなった。慶大が勝てば2021年秋ぶりの歓喜となる。勝ち点を取ったチームが優勝という最高の舞台で、賜杯をつかむのはどちらの大学か。

10月14日〜16日に行われた明大とのカードは、慶大が2勝1敗で勝ち点を獲得。1回戦と3回戦でエース村田賢一(商4・春日部共栄)を初回から打ち崩し、圧倒的な打力を他大学に披露した。投手陣においても、1戦目と3戦目でエースの外丸東眞(環2・前橋育英)が完投と完封を達成。現在、50と2/3回を投げ防御率は1.24、すでに5勝を挙げており、エースとして十二分の成績をマークしている。また、2戦目で敗れはしたものの先発の竹内丈(環1・桐蔭学園)、さらにリリーフの谷村然(環4・桐光学園)と森下祐樹(総4・米子東)で1失点リレーとし、見事な活躍を果たした。

外丸はチームの101イニング中50回2/3を投げている、正真正銘エースだ

投打でリーグ屈指のレベルを誇る慶大だが、ここで注目したいのは「首位打者」と「三冠王争い」だ。現在の打撃成績ベスト5は以下である。

順位	氏名(大学)	本塁打	打点	打率
1	栗林泰(慶大)	3	15	.432
2	宮崎(慶大)	3	11	.405
3	吉納(早大)	3	9	.385
4	熊田(早大)	1	2	.355
5	桑垣(立大)	1	8	.342

本塁打数は栗林泰三(環4・桐蔭学園)、宮崎恭輔(環4・國學院久我山)、さらに早大の吉納翼(スポ3・東邦)がトップの3本としている。打率、打点では慶大の2選手が3位以下に差をつけており、実質的には同大学内での三冠王争いとなりそうだ。

4番・栗林泰は現時点で本塁打数・打点・打率全てでトップに位置

一方で、早大の吉納は昨秋の早慶戦で8打数5安打で最終的にはリーグ2位の打率成績を残しフィニッシュしており、この秋の成績もご覧の通りである。「秋の早稲田は怖い」「早慶戦での早稲田は強い」といった雲をつかむような話はこの場でふさわしくないかもしれないが、慶大にとって吉納、打率4位の熊田任洋(スポ4・東邦)らの強力野手陣は脅威になることは間違い無いだろう。

来年のドラフト候補にもなを連ねる早大・吉納

早大といえば度々「小宮山采配」が話題に上がる。立大1回戦では4点差をひっくり返し、9回に2点を取りサヨナラ勝利を飾った。そこでは、一打同点の場面で小宮山悟監督はリーグ戦出場経験の浅い篠原優(社4・早大学院)を起用し、篠原はそれに応える適時打を放った。さらに続く代打の梅村大和(教3・早稲田実業)がサヨナラ打を記録した。秋からスタメンに定着した島川叶夢(スポ4・済々黌)も開幕2戦目となる東大2回戦で逆転2点本塁打を放っており、監督の起用と選手の活躍が見事に噛み合っている。慶大としても、春の早慶1回戦で代打の島川に勝ち越し3点本塁打を浴びているため、秋こそは抑えたい打者だ。

今季の打率は.240ながら印象的な活躍を見せる島川

昨秋は、早慶戦で勝ち点を取れば優勝という同じシチュエーションでまさかの2連敗。優勝筆頭と言われたチームだったが、目前で優勝を逃すという何にも代え難い悔しい経験をした。そして発足した今年のチームは、昨年までのリーグ戦でスタメンとして出場していたのが廣瀬隆太(商4・慶應)と先発の外丸しかおらず、戦力不足・経験不足を心配されていた。そして、春季リーグの開幕戦では攻守が噛み合わず法大に10ー0で敗戦。その後3戦目まで持ち込むも勝ち点を献上し、不安な「廣瀬世代」のスタートとなった。しかし、春季優勝チームの明治から六大学で唯一白星をあげ、早慶戦では第3戦に持ち込むと、廣瀬の決勝本塁打と外丸の完封により勝ち点を獲得。試合を重ねるごとに尻上がりに調子を上げると、最終的には3位で終え、14季連続でAクラスを死守した。

「廣瀬世代」の集大成に期待したい

取材では度々、選手たちは「“自分たちの弱さをわかっている”ところこそが強み」だと語る。まさに今年のチームは廣瀬のような能力が突出した選手が少ない中で、それぞれが与えられた仕事をしぶとくこなし、下馬評を覆して現在の位置につけている。“自分たちの弱さをわかっている”からだろうか。今年の慶大は技術、メンタルの面でも選手、スタッフが一丸となってより一層丁寧に整えている印象だ。慶應義塾高校も夏の甲子園で107年ぶりに優勝した。最高の舞台は整った。今年こそワセダに勝って、完全優勝。2023年を「慶應の年」するために悲願を達成し、みなさんとその喜びを分かち合いたい。

(記事:北村可奈)

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