生徒の人権を無視する“ブラック校則”を廃止せよ 本当に必要なルールを生徒と教諭が一緒に考える取り組み

「下校時間を男女で分ける」「防寒用のコート着用は許可制」「下着の色の指定」など、生徒の権利を尊重しない「ブラック校則」が、国内の学校には多数存在しています。しかしそんな中で、一部の学校では校則を見直す動きも。生徒の人権やプライバシー、そして社会のルールを色濃く反映している現代の校則と、それを変えようと行動する人々について調査しました。

「下校時間を男子と女子で区別する」理解に苦しむ“ブラック校則”

学生時代、どのような校則があったかを街できいてみると…

(19歳 女性)
「(冬場の)マフラー禁止でネックウォーマーだけOK」
Qなぜ?
「ひっかかってあぶないから」

(19歳 男性)
「下着の色が指定されている」

見えない下着の色まで指定されていることに違和感を覚えたといいます。ほかにも「下校時間を男子と女子で区別する」「防寒用のコートは事前に許可願を出す」など、理解に苦しむ校則が多数存在しています。

校則は、管理教育全盛の1980年代から問題となってきました。
例えば、「校則違反の髪型の生徒を卒業アルバムから削除する」「遅刻を取り締まるために教師が閉めた鉄製の門に生徒が挟まれて死亡する」など、校則をめぐって様々な問題が起こるたび見直しの動きもありましたが、今も理解に苦しむ校則は確実に残っています。こうした校則に対して弁護士は。

(愛知県弁護士会 粕田陽子弁護士)
「なぜ学校で子どもの権利を尊重することが根付いていかないのか。子どもの権利を守ることが根付いていくために、どんなことができるかということを校則問題を通じて考えたい」

校則による人権問題を調査している愛知県弁護士会は、県内の公立高校50校の校則を調査。現在も校則についての相談を受け付けています。

文科省が校則の在り方を指導…きっかけを作ったのは現役高校生!

こうした中、校則を徹底的に調べる現役高校生がいました。群馬県の高校3年生の神谷航平さん(18)です。全国およそ1600校の校則を調査し、WEB上で一般公開しています。誰でも見られるこのサイト、学校名やキーワードを入力すると校則が調べられます。たとえば「アルバイト」と検索すると、沖縄から北海道までの高校で1329件がヒット。「学校生活に大きな影響を与えかねないため原則禁止」などがありました。

神谷さんが校則を調べ始めたきっかけは、通っていた中学校で早く帰宅した場合「午後4時まで外出禁止」とされていたことでした。

(現役高校3年生 神谷航平さん)
「それらの校則に対して自分自身疑問を持ちまして、訳のわからない校則を変えられないかなというところに行きついた訳ですね」

校則の一部には合理的な根拠がないと感じた神谷さん。中学2年生の頃から全国の教育委員会に情報公開請求を行い、実に1600校分の校則を入手しました。その中には「カラオケに男女2人で入ってはいけない」「高校生で付き合う場合は両親の承諾が必要」などの校則が取り残されているのが現状だといいます。

校則の内容を、進学先を選ぶ参考にしてもらえればと、サイトで全情報を公開しています。この行動力が評価され、神谷さんはことし8月、世界的な経済紙「フォーブス」の日本版で、「世界を変える30歳未満」にも選ばれました。

(現役高校3年生 神谷航平さん)
「私自身は校則自体はなくすべきではない、むしろ校則はあるべきだと思っていて、しっかりと話し合いを行って、その上で変えられるような仕組みを作るべきと感じています」

神谷さんの活動の後、2022年に文部科学省は校則を「学校のホームページで公開すべき」と指導。さらには生徒指導のありかたを定めた「生徒指導提要」を12年ぶりに改訂。校則を変える際は、児童や生徒の意見を聞く事が定められました。

ジーンズでも制服でもOK! 新たな校則でのびのびと学ぶ生徒たち

2023年の春に生徒が参加して校則の見直しを行った、名古屋市千種区の菊里高校。校則の見直しからほぼ半年が経ち、教室の中をのぞいてみると、制服の生徒の隣でジーンズ、Tシャツやパーカー姿の私服の生徒も見受けられます。

この高校では、入学式や卒業式などの式典を除いて、私服を認めるようになりました。もちろん、制服を着るのも自由です。

(生徒)
「夏の暑いときに制服より涼しい格好ができるのが良い」

服装の自由化は、生徒たちが2年かけて教師や保護者と話し合い実現したもの。なぜ制服が必要か、なくすとデメリットはあるのか、など、自分たちでとことん考え大人たちを説得しました。

(生徒)
「僕の2つ上の先輩、2年分の思いが詰まって、その成果を僕たちの代で形に出せたのは大きなことと思います」

生徒と教諭たちが一緒に考えて校則を見直す“校則カフェ”とは?

校則について考える生徒たちは、名古屋市千種区にある市邨高校にも。授業が終わると、生徒が次々と集まってきました。

(生徒)
「只今より第2回“校則カフェ”を開催します」

生徒の提案で2023年6月にはじまった“校則カフェ”という取り組み。学校に改善してほしい校則について、生徒と教諭が意見交換する場です。この日のテーマは「防寒着」。今、認められている色はベージュ・グレー・黒の3色のみですが…

(生徒)
「問題点として(指定の)色の防寒着を持っていない場合、購入しなければならず、経済的負担が増えることと、黒や紺などの暗い色だと、夜道で見えにくく下校時の危険性がある」

そして、現在禁止されているパーカーの着用についても意見が出ました。

(生徒)
「ジャンパーやコートよりパーカーの方が温度調節しやすい」

(参加した教諭)
「学校としては体操服のジャージを着れば良いのではという話になる」

教諭たちも、保護者や生徒とどうすれば良い学校になるかを考えていきたいといいます。議題に上がった校則は、今後、職員会に提出し異論がなければ改正される見通しです。

(生徒会長 中森美幸さん)
「生徒主体の自治というか、ただ与えられたものを守っていくのではなく、みんなで作り上げていくような学校にしていきたい」

かつて学校の秩序を守る名目で、人権を侵害するまでに厳しくなっていった校則。本当に必要な最低限のルールは何か、生徒たちが自ら考え、時代に合った校則を作っていく動きが、着実に進んでいます。

CBCテレビ「チャント!」10月11日放送より

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