猛暑越え、甘み豊か 県産ラ・フランス、販売開始

販売開始基準日を迎え、店頭にずらりと並んだ県産ラ・フランス=山形市・ヤマザワ松見町店

 本県が生産量日本一を誇る西洋ナシ「ラ・フランス」が27日、販売開始基準日を迎えた。県内で最も生産規模が大きい主産地・天童市と、JAてんどうは、大阪市中央卸売市場でトップセールスを展開。今季は記録的な猛暑で小玉傾向ではあるものの、日照時間の増加で糖度は例年より高いという。芳醇な香りと甘みを全面に押し出し、魅力を売り込んだ。市場関係者の評価は上々だ。

 「今年は天候不順や強風被害など厳しい状況が続いた。それでも生産者の努力で、おいしいラ・フランスを出荷できた」。大阪市中央卸売市場で、同JAの金平芳己組合長は、新関茂副市長らと流通関係者を前に丹精込めた果実の魅力をアピールした。「過去5年で一番反応がよかった」と、同JAの山口輝販売部長は、猛暑の影響で各産地が例年通りにはいかない生産や出荷を強いられる中、本県産ラ・フランスへの期待が例年以上に大きいと分析する。

 県内でも、店頭に丸々と育った実が並んだ。山形市のヤマザワ松見町店では、特設コーナーを設け、県やJA全農山形の職員が、試食用のラ・フランスを配った。同市荒楯町2丁目の林谷栄一さん(86)は一口頬張り「とても甘くておいしい。この味が秋の深まりを実感させてくれる」と、早速手に取った。

 県によると、今夏の強い日差しを浴びたことで、県園芸農業研究所(寒河江市)で収穫されたラ・フランスは平年より1%ほど糖度が高く、追熟で糖に変わるでんぷんも多く含んでいるという。担当者は「厳しい夏だったが例年になく甘さが豊かなラ・フランスができた。県内外の多くの人に食べてもらい、日本一の産地をアピールしたい」と話した。

 春先の凍霜害や高温・少雨の影響で、収穫量は平年比で約2割減と見込まれる。約40アールの畑で栽培する天童市道満の小川智貴さん(38)は、今月6日の強風被害も受け「昨年と比べて収量は約3分の1に落ち込んだ」と肩を落とす。一方で「甘みの強さはお客さんへのいいアピール材料になる」と話す。ラ・フランス同様にリンゴの食味にも好影響を与えそうだ。同研究所で栽培するふじの糖度は、現時点で、既に例年の収穫期の値を超えている。東根市野川の植松和也さん(44)は「猛暑で実の日焼けや肥大の遅れが見られたが、寒暖差が大きい日が続き、今後食味や色づきは良くなりそう。寒さが増せば蜜も入って味が濃厚になる」と話した。

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