がん闘病中、母の死を越え「バス運転手」の夢を実現…15歳で亡くなった少年の実話を朗読劇に

朗読劇の稽古に励む「安心できる地域ケアを考える会」のメンバー=加古川市野口町水足

 がんで2022年に15歳で亡くなった少年の実話を基にした朗読劇「輝いて生きる」が、11月18日に兵庫県加古川市加古川町北在家の市民会館で披露される。母を乳がんで亡くし、自身も体調が優れない中、家族や医療関係者の奔走で、「一日運転手」としてバス運転手になる夢をかなえる物語。少年の担当だった看護師が脚本を手がけ、医療、福祉関係者らによるグループが、最期まで自分らしく生きる大切さを表現する。(斉藤正志)

■医療、福祉関係者ら出演

 朗読劇のモデルは、3歳の時、脳腫瘍の一種「多発性髄芽腫」と診断され、中学生だった同県宍粟市の長田悠(おさだゆう)さん。バスの運転手になることを夢に抱いていたが、脳腫瘍や治療による副作用で体調が悪化。20年には応援してくれていた母が45歳で死去した。

 長田さんが元気なうちに夢をかなえさせたいと、父や看護師らが神姫バスと交渉。同社の全面協力で、21年10月に一日運転手になることが実現し、同県姫路市の車庫などを見学した。長田さんは22年6月に亡くなった。

 朗読劇は、東播地域の医療、福祉関係者らでつくる「安心できる地域ケアを考える会」が企画した。みとりや緩和ケアなど、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるための支援をテーマに、新型コロナ禍前の19年まで毎年創作劇を上演。今回は4年ぶりの公演で、実話を扱うのは初めてとなる。

■「自分らしく生きる大切さ」

 長田さんがモデルの少年「純」が、「天国に行っても、いつもそばにいる」と話す母をみとり、バス運転手の夢をかなえて、最期まで死を恐れずに生を全うするストーリー。

 出演者やスタッフは、今年9月から毎週1回、加古川市内に集まって稽古を重ねている。陵南中放送部の生徒も出演する。座長を務める坂本明さん(53)は「今この瞬間を懸命に生きること、自分らしく人生の最期まで夢や希望を持って生きることの大切さを、感じてほしい」と話す。

 無料。午後2時開演。申し込み不要。手話通訳、要約筆記あり。同会TEL079.421.7417

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