選手第一の入場行進

 2年前の東京五輪ころからだろうか。「アスリートファースト」という言葉がよく使われるようになった。選手第一であってこそ、スポーツは輝きを増す。先日、そういう場面に出会った▲今月中旬に閉幕した鹿児島国体の総合開会式。長崎県選手団は今年も入場行進でそれを実践した。他県のほとんどが「前列に役員、後列に選手」という旧態依然の配置をする中、長崎は選手を前列に出して行進した▲このスタイルを初めて採用したのは2016年の岩手国体。それまでの新聞報道やテレビ中継では役員の方が目立っていたが、以降は選手が主役になった▲今年はさらに一手を加えた。男女混合の隊列を組んで「ジェンダーレス(性差のない)の社会推進」をアピール。身長の低い方から順に並び、一人一人の顔も見えやすくした▲選手たちからの評判も上々だった。「家族や友人がテレビに映っていたと喜んでくれた」「他県は何でやらないのかなと思った」。同業他紙の記者から「長崎はいい写真を紙面に掲載できてうらやましいですね」と言われたときは、何とも誇らしかった▲残念ながら、長崎の天皇杯(男女総合)順位は39位と振るわなかった。でも、選手第一の姿勢はどこよりも際立っていた。行進した選手たちの笑顔が、それを証明していた。(城)

© 株式会社長崎新聞社