【潜入】ビルの屋上でホップ収穫祭、ビールのタンクへ投入!上野・不忍産クラフトビールが誕生

「地元の応援ビールを自分たちで醸造したい!」と街づくりの一環で一念発起した自家醸造ビールの飲食店「ひつじあいす」。「どうせならその材料(ホップ)も自分たちで栽培しよう」と、同店の仲間である地元の人々や東京大学 大学院 都市デザイン研究室が、3年前から取り組んでいるのがホップ栽培。ビルの屋上など約7カ所でホップを手塩にかけて育ててようやく収穫。その収穫祭とビアタンクへのホップ投入式に潜入してみました!

青空の下、ビルの屋上で約4,400個もの香り豊かなホップを収穫

ビルの屋上で栽培されるホップを収穫する関係者たち

JR上野駅から徒歩5分。上野仲通り商店街からすぐのオフィスビルの屋上に上がると、すがすがしい秋晴れ下、美しい緑のツルが生い茂っていました。都会ではあまり見慣れないアサ科の植物、ホップ。ビールの原料として有名です。その緑色の花、つまりホップのまり花がふんわりと膨らんでいました。

たわわなホップのツルにハサミを入れてブドウの房のように手際よく収穫していたのは、飲食店「ひつじあいす」の皆さんや東京大学 大学院 都市デザイン研究室の皆さん。同店を経営する長岡商事の代表取締役社長 前川弘美さんは笑顔で次のように説明します。

ホップがたくさん収穫でき、喜びにひたる前川社長。

「当社では2年前からホップを栽培し、社員寮の屋上と、自社ビルの屋上の2カ所で栽培しています。昨年は手のひらにのるくらいのホップしか収穫できませんでしたが、今年は当社だけでも約700粒、私の自宅で栽培したものも含めれば約1000粒も収穫。試行錯誤しながら昨年の失敗も生かしつつ栽培し、本年は予想以上にたくさん収穫できました!」。

この日は約2時間かけて合計で約4,400粒のホップを収穫。タンク1個分の仕込みには約1,500個のホップが必要だそうで、今年は初めて1タンク丸ごと自家栽培ホップ100%使用のビールが仕込めることになったそう。

ちなみに一般的にビールの仕込みには、乾燥状態の市販の業務用ホップなどが使われるが、同店では収穫したての新鮮な生のホップと、前日までに栽培して冷凍保存しておいたもの、つまり自家栽培のホップだけを使用したビールを仕込みます。ご当地感が満載!

個性的で栽培が難しいホップ、かわいらしく見えてくる瞬間♡

ホップの花の中央部にはルプリンと呼ばれる黄色の粉が付いている

収穫されたホップに近づくと、かんきつのような、大葉のような、爽やかな香りがすでに辺りに漂っていました。これはホップの花びらの間に無数に入っている花粉のような黄色の粉のせい。ビールの香りやにがみ、コクの元になる大切な要素なのだそう。

ここで栽培しているホップは、カスケード種とカイコガネ種の2種。山梨原産のカイコガネは「甲斐黄金」と書く在来種で、まろやかな味わいになるホップなのでホワイトビールなどに特に合うとのこと。

ホップの花のサイズはいろいろ。中には5センチほどの特大サイズもあった

ホップは品種によって性質が異なる上に、同じ品種でもそれぞれの個性があって、均一には育たないという難しさもあるそう。

しかし、日当たりの良い枝のホップは一様にサイズが大きく、そういった単純なところもあると何だかかわいらしく、収穫を手伝っているうちにホップがとても愛おしく思えてくるから不思議です。

新鮮なホップをビールにのせて「追いホップ」!収穫日だけの体験

沸騰させた麦の液体にホップを投入して1時間煮込む

収穫の後は、みんなで「ひつじあいす」へ移動。両手のひらでホップの花をやさしく包むようにして軽くたたくと、その空気圧で中の黄色の粉がとび出し、強い香りを放ちます。このように「香り出し」をしたホップをビールのタンクに入れて発酵させることで、ホップの爽やかな香りがより出てくるのです。

沸騰させた麦の液体に「香り出し」したホップをネットに入れて投入。約1時間煮込みます。その後、麦の液体は20℃に温度管理されたタンクに移され、そこからいよいよ発酵が始まります。ビールの飲み頃は3週間後の見通しですが、その時の発酵具合にもよるようです。

地方のビール工房などではこのように自家栽培したホップを収穫してビールを作る光景が見られるかもしれませんが、都内では貴重で、台東区では初の試み。上野の皆さんの結束にとても感心しました。

左がホップのフリット、右が「追いホップ」したクラフトビール

ホップを収穫した日にしか味わえない究極のぜいたくもありました。収穫したての香りの良いホップをクラフトビールに1個のせて「追いホップ」して味わうと、いつも以上にホップのアロマがやさしく広がります。収穫の喜びに浸りながら、収穫した日だけ味わえる感動体験。

ほろほろとやわらか~\!ビールで何時間も煮込んだラムのすね肉

「ビール屋ならではのラムシャンク煮込み」2,750円

さらにホップの花をサクサクに揚げたフリットは、口に含んだ瞬間、シュワ〜と溶けてなくなるようなユニークな食感。最後に苦みが広がり、ビールの後味に似たコクが存分に楽しめます。こちらも採れたての新鮮なホップだからこそできる特別な一品で、クセになる味でした。

そして見逃せないのが、「ひつじあいす」の看板ビール「ひつじあいす」で何時間も煮込んだ「ビール屋ならではのラムシャンク煮込み」2,750円。9月から加わったインパクトのある新メニューです。

肉にナイフを入れるとスジ肉がほろほろと崩れるやわらかさ。香草を効かせたバターソースとともに、自家製の爽やかなミントチャツネをつけながら味わいます。

ランチ限定の「ラムバーガー」1,000円

他にランチメニューとして人気なのが「ラムバーガー」1,000円。肉厚のラム肉のパテにレッドオニオンやキュウリなどの刻みがメキシカンサルサソースと一緒にのせてあります。このソースがとてもやみつきになる味で、ビールとも合いました。

天高く馬肥ゆる秋。ホップ収穫祭も、タンク投入式も、ホップのフリットも、追いホップも、初体験づくしの楽しすぎる1日でした。今回の自家栽培ホップ100%使用のご当地クラフトビールは11月上旬頃から飲み頃とか。今だけの限定ビールなので、ぜひこの機会においしい羊肉と一緒に堪能してみてくださいね。

今だけ杉玉ならぬホップのリースが羊の模型に飾られている

「シノバズブルワリーひつじあいす」
所在地:東京都台東区上野2-10-7
アクセス:JR上野駅・御徒町駅・東京メトロ湯島駅より徒歩3分
電話番号:03-3836-1901
営業時間:[日~木/土・祝]12:00~23:00(L.O 22:30)[金]17:00~23:00(L.O 22:30)
規模:1階26席/2階46席/計72席(2階は半個室と完全個室)

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