人間国宝の大澤光民さん死去、82歳 高岡の鋳金家、「鋳ぐるみ」考案

「創作の大切さを伝えていきたい」と語っていた大澤光民氏=2018年1月、北日本新聞社

 鋳金の重要無形文化財保持者(人間国宝)で、伝統的な焼型鋳造(やきがたちゅうぞう)を受け継ぎながら独自の技法「鋳(い)ぐるみ」を生み出した大澤光民(おおざわ・こうみん、本名・大澤幸勝=おおざわ・ゆきまさ)さんが29日午前6時8分、肺炎と心不全のため高岡市民病院で死去した。82歳。自宅は高岡市下伏間江148。通夜は30日午後7時、葬儀は31日正午からいずれも同市下黒田のセレモニーホール高岡で。喪主は長男、幸治(こうじ)さん。大澤さんの死去により、県内在住の人間国宝はいなくなった。

 大澤さんは1941年高岡市生まれ。県立職業補導所銅器科を卒業後、高岡銅器の鋳造所で伝統技術の修業を積み、市特産産業技術者養成スクールでも学んだ。80年、鋳型に銅線などの細い金属を固定し、別の金属を流し込んで模様を表す技法「鋳ぐるみ」を考案。細やかな表現で独特の世界を生み出し、高く評価された。

 78年から日本伝統工芸展に出品し、83年に日本工芸会正会員となった。2000年に「鋳ぐるみ鋳銅花器」で同展高松宮記念賞を受けた。05年、故金森映井智(えいいち)さん(高岡市出身、彫金)に次ぐ県内2人目の人間国宝に認定された。同年、北日本新聞文化賞を受賞。11年に旭日小綬章、15年に高岡市名誉市民の称号を受けた。

 高岡地域文化財等修理協会の会長として「平成の御車山」の制作を進めるなど、伝統技術の継承にも尽力。日本工芸会や県工芸作家連盟などの役員も務め、伝統工芸の発展に貢献した。

 遺族によると、大澤さんは18日に自宅で転倒して左脚の骨を折り、高岡市民病院に入院。25日ごろ肺炎と心不全を併発して容体が悪化し、息を引き取った。

新田知事「偉業に敬意」

 大澤光民さんの訃報を受け、新田八朗知事は「県の伝統工芸発展のため、まだまだご指導いただきたいと願っておりましただけに、誠に残念でなりません。県民を代表して、先生のこれまでの偉業に深く敬意を表するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします」とコメントを寄せた。

 角田悠紀高岡市長は「先見性と卓越した技術力、包容力に富んだ人柄は、多くの人から敬慕され、衆望を一身に集めておられた。心からご冥福をお祈り申し上げます」とコメントした。

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