干し芋の未利用部分活用 飼料化支援、茨城県が循環モデル

茨城県庁=水戸市笠原町

茨城県は干し芋の製造過程で捨てられている部分を、飼料や肥料に加工する民間事業者の支援を始める。原料のサツマイモの約3割は廃棄されているのが現状。未利用部分を有効活用することで、飼料高騰に対応するとともに食品ロスを削減。干し芋生産量日本一の茨城県で独自の資源循環モデルの形成を目指す。

「捨てるのはもったいない」。県央地区で農業生産法人を営む40代男性は、干し芋を作る際に出るサツマイモの廃棄部分について話す。

同法人は人気品種「紅はるか」を中心にサツマイモを栽培。11月から翌年の春までは干し芋も製造する。その過程で出る未利用部分は1日400~600キロになるという。シーズン中に膨らみ、「処分は生産者共通の課題」と明かす。

干し芋の製造業者の中には、廃棄する分を畜産農家に提供したり、利活用して商品を開発したり、新たな取り組みも始まっている。ただ、設備導入や事業拡大には大きな投資も必要なため、利活用の広がりは限定的となっている。

干し芋の製造過程では、サツマイモ全体のうち約3割に相当する部分が捨てられるという。県産地振興課によると、2022年産サツマイモで干し芋に使われたのは約3万2千トン。うち約1万トンが製造過程で廃棄となった。同課の担当者は「各農家で産業廃棄物に出したり、堆肥にしたり、相当な量」と話す。

県はこうした現状を踏まえ、干し芋の製造過程で発生する未利用部分を飼料や肥料に加工するための施設整備、機械導入の初期費用の一部を補助する。9月の補正予算で計約2億6千万円を盛り込んだ。

加工技術のノウハウを持つ県内業者や共同事業体が対象。農業者は除く。

飼料が高騰する中、干し芋の未利用部分を広域・大規模に回収し、加工した飼料や肥料を県内で流通させることで、資源循環のモデルを形成したい考えだ。新規参入や事業拡大が対象。公募で寄せられた計画書を審査の上、11月末までに業者を決める。

県環境政策課は「飼料や肥料が高騰する中、食品ロスの削減、生産コストの削減につなげたい」とする。

循環事業の一環として、養殖魚の餌への活用も検証する。干し芋の未利用部分を配合した餌を試作。県栽培漁業センター(鹿嶋市)で12月から、マサバやウニ、アワビに与え、成長への影響や食味を検証する。県水産振興課は「結果を見て、餌の開発を進めたい」としている。

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