<レスリング>U23世界選手権(アルバニア)出場の女子チームが帰国

アルバニア・ティラナで行われたU23世界選手権に出場した女子チームが10月29日、羽田空港に帰国した。軽量級から中量級の6階級で決勝進出を果たし、「金5・銀1」の成績。国別対抗得点で優勝した。

金浜良コーチ(サントリー)は、軽中量級全選手のメダル獲得に「(日本の)3番手くらいの選手であっても、ここまでできるのは日本にとって大きい。このハイレベルの中で練習すれば、(トップを押し上げ)オリンピックでも期待できる」と、日本全体の底上げが頼もしそう。

一方で、重量級のメダルなしは、やや物足りなそう。トップと2番手、3番手との差が軽中量級より大きい現実を目の当たりにしたわけだが、「上位選手と五分五分の試合も多かった。経験不足によるところが大きい」と分析し、コロナ禍による国際大会の不足も要因と見ている。「これを反省材料とし、今後頑張ってほしい」と期待した。

ほとんどの階級でパリ・オリンピックへの道が閉ざされた状態だが、次世代を目指す選手が多いこともあり、「どの選手も『この大会が自分のオリンピック』という感じで伸び伸びやっていた。気持ちは(ロサンゼルスへ向けて)切り替わっていました」と話し、今後の奮戦に期待した。

▲出場した大会は5大会連続優勝の女子チーム=UWWサイトより

50kg級でU17、U20に続いて3世代目の世界一に輝いた伊藤海(早大)は、決勝戦は相手の負傷による不戦勝という燃え切れない優勝だった。「闘うつもりで、いいコンディションにもっていきました。直前に相手の棄権を知って、やり切れない気持ちになりましたが、これも経験でしょう」と振り返る。

準決勝までは3試合連続でテクニカルスペリオリティ勝ちと素晴らしい内容。それでも、「その中でも組み手の課題とかが残りました。全日本選手権へ向けて克服していきたい」と言う。

3世代での世界選手権優勝は大きなステップ。「さらに上のレベルで優勝できるように頑張りたい。(パリ・オリンピック出場はなくなったが)次のオリンピックを目指して頑張っています。目の前の試合、一つ一つで結果を出していきたい」と、今後に闘志を燃やした。

3世代制覇の“先輩”であり、2度目のU23世界制覇の62kg級の稲垣柚香(至学館大)は「ホッとしていますけど、シニアの世界選手権やオリンピックで優勝するには、もっと強くなる必要があると思っています」と、目標はもっと上にあることを強調。だが、U23欧州チャンピオンにフォール勝ちするなど圧倒的な強さを見せており、「自分の攻める形はつくれました」と満足そう。

6月の明治杯全日本選抜選手権では、前年の世界チャンピオン(尾﨑野乃香=慶大)を破りながら、元木咲良(育英大)に敗れ、結局、パリへの道が閉ざされた。それでもオリンピックへの思いは「消えていません」ときっぱり。「濃い1日、1日をすごしていこう、と覚悟を決めています」と語気を強めた。

その表情からして、68kg級でのパリ挑戦もありそう。全日本選手権での出場階級の問いには、「未定です」と答えたあと、無言の笑顔。「ありえるかな?」との再度の問いに、もう一度、「未定です」と、謎をたっぷり含ませた笑顔-。

▲メダル獲得選手。左から伊藤海、大野真子、今井佑海、屶網さら、永本聖奈、稲垣柚香


■53kg級優勝・大野真子(日体大)「初めてのU23世界選手権で、しっかり結果を残せてうれしかったです。準決勝(AIN=ロシア)がぎりぎりの試合でしたが、1回戦でインド選手にフォール勝ちするなど内容も、まあまあです。決勝の相手はシニアの世界選手権3位の選手。その相手に勝てたことは自信になりました。5年後のロサンゼルス・オリンピックを目指しています。そのため、まず12月の全日本選手権で優勝できるよう頑張っていきたい」


■55kg級優勝・今井佑海(自衛隊)「優勝だけを目標にして、それを達成できてホッとしています。(2回戦でシニアの欧州チャンピオンに勝ち)自信にはなりましたが、私も去年、シニアのアジア選手権で勝っていますから…。(国際大会は8大会連続優勝だが)今回の決勝は大差ない試合でした。外国はレベルアップしています。負けないように実力アップしていきたい。パリ・オリンピックの道は途絶えましたが、それは自分の責任。それを踏まえて、次に向けてステップアップしていきたい」


■57kg級優勝・屶網さら(KeePer技研)「久しぶりの海外での試合。優勝できて、うれしいです。去年のシニアのアジア選手権は59kg級での試合。今回は階級を落としての出場。やはり59kg級の選手の方が力が強かったですね。57kg級で闘う自信になりました。パリ・オリンピック出場はなくなりましたが、12月の全日本選手権を目標にやってきました。その目標達成に向けて、この優勝は大きな自信になります」


■59kg級2位・永本聖奈(アイシン)「会社に応援してもらっている、というプロ意識が足りていなかったと思います。決勝で闘った相手は(6月末に)至学館大に来ていた選手で、そのときも練習しました。タックルにいったらつぶされるのでは、と恐れて守りに入ってしまい、攻め切れませんでした。不完全燃焼です。自分のタックルを信じて攻めることが大事だと思い、練習に役立てたい。次のオリンピックへ向けて気持ちは切り替わっています」

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