【MLB】 バント重用のDバックス GMはバント策をどう見ている?

写真:大ベテランのロンゴリアも独断でバント

日本時間29日に行われたワールドシリーズ第2戦、Dバックスが3点リードで迎えた8回表の攻撃、無死1塁の局面だった。打席には今季オールスター選出の6番ルルデス・グリエル・ジュニアが入った。

試合を見ていたDバックスのマイク・ヘイゼンGMは、後ろにいたGM補佐に振り返って「グリエルはバントするだろう」と言った。今季24本塁打を放ち、この日も1安打1敬遠の強打者グリエルだったが、ヘイゼンGMの言った通りにバントを選択。Dバックス打線はその後に繋がり、一挙3点を追加した。

実に2年半ぶりのグリエルの送りバントを完璧に予想したヘイゼンは「わからないよ。でも今僕たちはバントしかしないから。だから彼はバントすると思ったんだ」とニヤリと笑った。

送りバントが有効性を欠くという統計は、もはや球界における常識となっている。MLBでは送りバントはめっきりと数を減らし、レギュラーシーズン中のトップもDバックスの36個に留まっている。実際、このグリエルのバントによって、勝利確率はバント前の94.4%から94.1%に下がっている。

しかし、Dバックスはプレーオフでバントを重用。この第2戦では、グリエルのものを含む3犠打を決めている。ワールドシリーズここまでの4犠打は、既に過去3回のワールドシリーズの犠打数を上回る。(19年以前、そして21年はナ・リーグでは投手も打席に立っていた)

もちろん、Dバックスがワールドシリーズまで下剋上できたのは、バントのおかげではない。1・2番コンビのケテル・マーテとコービン・キャロルが打線を牽引し、先発ローテはメリル・ケリーとブランドン・ファートが想定以上の好投、ブルペンもポール・シーウォルドとケビン・ギンケルの鉄壁コンビを中心に踏ん張っている。

ただ、現代のトレンドからは外れたバントを用い、実際にその策が後続のキャロルやマーテの打棒によってハマっているシーンが多いことからも、Dバックスのバント策は注目されている。

データを用いて意思決定しなければならないフロント側の人間からすれば、統計的には有効ではないバントはどう見えているのだろうか?『スポーツ・イラステイレイテッド』が取材している。

ヘイゼンは「これが僕たちなんだよ」と寛容な様子だ。

「僕たちがただ並んで他のチームに対してホームランを打ちまくるようなことはしないと思う。試合に勝つ方法を見つけなければならない。得点する方法を見つけなければならない。僕たちはたくさんのホームランを打たないだろう。だから単打を集めて、それを得点にしていくことが重要なんだ」と語る。

たしかにDバックスはプレーオフでは長打力も発揮しているが、シーズン中のチーム本塁打数はメジャー22位にすぎない。もともと長打力で圧倒できる打線ではない、と見ているようだ。

さらにヘイゼンは「一塁に人が出る度にバントするようなやり方は必ずしも必要ではない。でも僕たちにとって(バントは)機能している。だからなぜバントするのかは理解できる」

長打、バント、盗塁。ビッグボールが当たり前の現代MLBで新鮮な野球を展開し続けるDバックスからは目が離せない。

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