「いまだ暴力の中」ウクライナから来日の女性画家、現地の風景など描いた作品展

ウクライナ・ザポロジエの自宅のアパートの窓から見た風景を描いたルイーザさん(近江八幡市安土町・浄厳院)

 海外の芸術家らが地域で共同生活をしながら創作した作品などを披露する現代美術展が、滋賀県近江八幡市安土町の浄厳院で開かれている。ロシアによる侵攻が長期化するウクライナから昨年に続き来日して制作活動に取り組んだ女性画家が、母国や滋賀で目にした穏やかな情景を描いた絵画などが並ぶ。

 現代美術を通した国際交流を目指す団体「AT ARTS」(長浜市)が企画した。今年のテーマは「解き放つ」で、同寺に滞在して作品を制作した芸術家を含め、国内外の計30人の作品が展示されている。

 ウクライナ人画家マリア・ルイーザ・フィラトヴァさん(24)は、滋賀の山々や琵琶湖を描いた作品のほか、ザポロジエの自宅の窓から見た風景を描いた作品を手掛けた。

 ルイーザさんはウクライナの現状について「当初はいい結末を期待していたが、いまだ暴力は存在している。その中で日常生活を継続しており、不安定な状況の中で生きている」と胸の内を明かす。「自分の絵を見て、人間性を深めることにつながってほしい」と願う。

 スペイン・カタルーニャの陶芸家プロヴィデンシア・カザールス・マスフェレールさん(60)、カタルーニャ文化をテーマに活動するライターのジョセップ・バザールト・サラさん(63)は同寺に滞在中、周辺に暮らすお年寄りにこれまでの人生について取材した。プロヴィデンシアさんは一人一人の生きざまを表現した人形を、ジョセップさんはカタルーニャ語でインタビュー記事や俳句をつくった。

 旗を持った子どもの後ろ姿に未来への希望を託した日本画の大作や、命をテーマに燃え残った和紙を重ねて女性の体を立体的に浮かび上がらせた作品などもある。

 11月5日まで。入場1500円(拝観料含む)。期間中の土日曜と祝日は、舞踏、音楽ライブのパフォーマンスなどがある。

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