【厚労省医薬品販売制度検討会】“濫用薬”の記載を大幅書き換え/20歳以上では小容量のネット販売残す方針/とりまとめ案

【2023.10.30配信】厚労省は10月30日に「第9回医薬品の販売制度に関する検討会」を開いた。この中で「濫用等のおそれのある医薬品について」を議論し、前回のとりまとめ案から大幅な書き換えを行った。これまで濫用等のおそれのある医薬品については、ネット販売ではなくオンライン服薬指導に似通った「オンライン販売」とする方向で議論してきたが、9回のとりまとめでは20歳以上において小容量についてはネット販売を可能とする記載とした。

10月30日に開かれた「第9回医薬品の販売制度に関する検討会」のとりまとめ案では、「濫用等のおそれのある医薬品の適正な販売のための方策」について、<対応案>として、「濫用等のおそれのある医薬品については、適正な使用を目的とする購入者のアクセスが過度に阻害されることがないよう留意しつつも、濫用目的の購入や目的外使用が疑われる多量・頻回購入の防止・抑制を徹底する必要がある。販売に当たっては、濫用目的で購入される可能性を踏まえ、薬剤師等が購入者の状況(購入数量、頻回購入に関する情報、挙動等)を確認して販売の可否(適正な使用を目的とする購入か否か)を判断し、濫用に対する注意喚起も含めた必要な情報提供を行うことが、濫用目的での購入を防止するために不可欠である」と記載。
その上で、「若年者については、近年濫用が拡がりつつあるとともに、身体に与える影響が大きいなど、様々な観点で濫用のリスクが高い。このため、若年者への複数個・大容量の製品の販売は不可とすることが適当である。また、若年者以外であっても、複数個や大容量の医薬品を購入しようとする者については、濫用の危険性は同じく高いと考えられる。このため、これらの者(若年者及び複数個・大容量製品購入者)への販売については、濫用のリスクを十分に踏まえ、状況確認や情報提供を十分に行う、頻回購入を防止する等、慎重な販売方法とする必要がある」とした。

「状況確認や情報提供については、対面又はオンライン(映像と音声によるリアルタイムでの双方向通信。オンライン服薬指導と同様の方法を想定している。以下同じ。)であれば、直接のやりとりや会話の中で、購入者の反応や理解度に応じ柔軟に対応でき、十分な状況確認及び情報提供を行うことが可能であり、また、必要な場合には濫用しないよう支援に繋げることが期待できる。これに対し、非対面(対面又はオンラインによらない方法をいう。以下同じ。)の場合、文面のみでのやりとりなど情報が限られることから、購入者の状況を十分に把握することや、個々の状況に応じた支援へ繋ぐといった対応が困難である」と記載。また、「一方で、インターネット販売では、アカウントに紐付き購入履歴が記録されているため、頻回購入を防止することが、対面による販売と比較して容易であるとする意見もある。いずれの場合においても、販売方法の特性を踏まえた実効性のある対策について検討することが重要である」とし、「濫用のリスクが高く、慎重な販売方法が必要な若年者及び複数個・大容量製品購入者に対しては、十分な状況確認や情報提供を行うことが求められることから、対面又はオンラインによる販売方法とすることが必要である」とした。

これはすなわち、若年層もしくは若年層以外の大容量購入者には、いわゆる“オンライン販売”を求める方針がうかがえる。

加えて、「濫用のリスクが高い者の頻回購入防止のため、若年者及び複数個・大容量製品の購入希望者への販売に加え、薬剤師等が購入者の状況を確認した際に濫用のリスクが高いと判断した者や、非対面の販売であること等の事情により薬剤師等が十分な状況確認を行えない購入者に対しては、身分証等による氏名等の確認と記録を行い、記録を参照して販売の可否を判断する必要がある」とし、オンライン販売にあたっても、場合によって身分証明を求める方向。「また、情報提供を確実に行うため及び不正な方法による入手を防止するためには、製品の陳列は購入者の手の届かない場所で行うことが効果的であると考えられる」とした。

具体的には、以下の方法による販売を検討するとした。
ア 薬剤師又は登録販売者が販売可否の判断に当たって必要な情報を確実に確認するため、対面又はオンラインによる販売を原則とする。ただし、20 歳以上の者が小容量の製品を1つだけ購入しようとする場合には、対面又はオンラインによらない販売も可能とする。
イ 購入者が 20 歳以上かどうかの確認を行う。対面又はオンラインの場合、一見して明らかに判別できる場合は身分証等による確認を不要とするが、外見だけでは判別が難しい場合には、免許証や学生証等の写真付きの公的な身分証の提示を求めること等により年齢を確認することとする。対面又はオンラインによらない場合には、本人認証済みのアカウントや本人確認サービスを利用するなど、購入者が 20 歳以上かどうか確実に確認できる方法により確認することとする。
ウ 販売可否の判断及び適切な情報提供を行うため、購入者の状況の確認を行う際は、通常の医薬品の販売において必要な情報のほか、濫用目的でないかの確認を行うこととする。
エ 20 歳未満の者が購入を希望する場合、適正な使用のために必要な最低限の数量に限って販売できることとし、小容量の製品1個の販売を原則とする。20 歳以上の者が複数個又は大容量製品の購入を希望する場合には、薬剤師又は登録販売者が購入理由を確認する。
オ ①20 歳未満の者の購入の場合、②20 歳以上の者による複数個又は大容量製品の購入の場合、③20 歳以上の者による小容量製品1個の購入に
おいて必要な場合(状況の確認時に濫用目的や頻回購入の疑いが認められる場合等)、④非対面による販売の場合には、購入者の氏名等を写真付きの公的な身分証等、氏名等が確実に確認できる方法で確認し、店舗における過去の購入情報を参照し、頻回購入でないかを確認する。また、販売後にはこれらの情報及び販売状況について記録を行う。
カ 他店での購入状況について確認する。なお、購入者の意図的な複数購入を防ぐための対策として、購入履歴の一元管理 8)を行い、複数店舗での重複購入を防止する仕組みを導入することの検討も必要である。
キ アの方法により確認したイ~カの状況を踏まえ、薬剤師又は登録販売者は販売の可否を判断する。
ク 販売に当たり、通常の医薬品と同様の使用方法や注意事項のほか、適正使用や過量服用への注意喚起(家族等の過量服用を防止するため医薬品を適切に管理すること等の注意喚起を含む。)を行う等、薬剤師又は登録販売者による情報提供を義務付ける。
ケ 情報提供の徹底及び不適正な入手の防止のため、直接購入者の手の届く場所に陳列しないこととする。

上記の記述では、20歳以上で小容量の製品を1つだけ購入しようとする場合にはネット販売が継続される見通しとなる。

案では、販売の仕方以外で必要な事項も記載。
「濫用の防止には、販売時の対応だけでなく、以下の対応も必要である」とした。
・濫用等のおそれのある医薬品について、濫用防止に対する注意喚起として、外箱等に「濫用のおそれのある医薬品」である旨の表示や、濫用に伴う危害に関する情報の明記を行う。
・濫用等のおそれのある医薬品に対する上記の対策が店舗での業務に適切に反映されるとともに、啓発や適切な支援に繋げる等の濫用防止活動が推進されるよう、店舗で販売に従事する者への研修等を行う。

「また、以下の取組について、販売業者、製造販売業者、行政等関係者が連携して実施することが必要である」とした。
・濫用の実態(医薬品の入手経路、どのように服用されているか等)の把握及び実態を踏まえ必要と認められた対象成分の見直し
・広く国民へ向けた啓発、注意喚起等の周知活動(初等中等教育の現場における啓発の充実を含む。)
・対策の効果の検証や、実効性を上げるための調査

また、「OTC医薬品の濫用の拡大防止に当たっては、医薬品の販売方法の規制や適正使用に係る啓発といった対応のみならず、その背景として指摘されている社会的不安への対応も重要である。関係省庁間で連携し、自殺対策や孤独・孤立対策等の社会的不安への対応とともに取組を進めることも重要である」とした。
「長期的には、マイナンバーカードを活用する可能性について検討することも考えられる」と記載した。

「濫用等のおそれのある医薬品について」は、同日の検討会で嶋根卓也氏(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部 心理社会研究室長)がアメリカの規制を紹介。アメリカでは「エフェドリンおよびプソイドエフェドリンを含有する医薬品は、カウンターの後ろ、または施錠されたキャビネットに置かなくてはならない」となっており、対面販売が原則となっていることを示した。

「濫用等のおそれのある医薬品」の規制については、アメリカなどの諸外国の規制の方が日本よりも厳格であるとの指摘も出る可能性がある。
日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、「濫用等のおそれのある医薬品」の規制について、「小包装にすべき」との考えを示したほか、「年齢で区切るべきではない」と指摘。「相手の状態を確認できるのはネットよりオンライン・対面という話があった。20歳以上、小容量であっても対面・オンライン販売にすべきだ」と指摘した。
一方、ネットでは記録がしやすい面もあるとし、特性を考慮して販売の在り方を切り分けることも可能ではないかとの考えが事務局から示された。

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