福井県の劔神社で平安時代の大型建物跡見つかる 1辺1.3mの柱穴が等間隔に…社殿の可能性

柱穴が等間隔に並ぶ大型建物跡が見つかった発掘調査現場=10月26日、福井県越前町織田の劔神社
大量の土師器などが出土した基壇=10月19日

 福井県越前町織田の劔神社境内の「杉の花遺跡」で10月28日までに、12世紀後半(平安時代末期)以前の大型掘っ立て柱建物跡が見つかった。1辺約1.3メートルの方形の柱穴が等間隔に並び、町教委によると神社の社殿だった可能性がある。また、基壇を伴う礎石建物跡も確認され、基壇の中から大量の土師器(はじき)が出土した。

 発掘調査は神社の社務所建て替えに伴い、町教委が今年9月から現在の本殿の南東約400平方メートルの範囲で実施している。

 現段階で確認できた大型建物の柱穴は六つ。五つが南北方向に約3.3メートル間隔で一列(15メートル以上)に並ぶ。残る一つは北端の柱穴が角になるよう西に向かった場所にあり、その先は未調査のため不明。

 町教委によると、大きさや形などから同時期に掘られた柱穴で、大型の建物が建てられていたと推測。担当者は「これまで県内で見つかっている掘っ立て柱建物としては最大級。国衙(こくが)や郡衙の正庁に匹敵する大きさで、社殿の可能性がある」と説明する。

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 室町時代に製作されたと推定される「劔神社古絵図」(福井県指定文化財)には、この場所に大型建物は描かれておらず、今後の調査で柱穴を掘り下げ、建物の時期や性格が分かるような遺物が残されていないかなどを調べる予定。

 このほか、大型建物跡のそばで細長い古代の建物跡も確認した。

 また、大型建物の北側に礎石建物があり、4回にわたり建て替えられていたことも確認された。最大のものは南北約10メートル、東西約19メートル以上で12世紀後半の建物とみられている。

 建物には基壇(土台となる盛り土)があり、中から千点以上の土師器皿・椀が出土。青白磁や灰釉陶器なども混じっていた。土師器はろくろ成型による地元産の皿が主で、完形品が多く隙間なく埋められていた。基壇の中に大量に土器を埋める例は珍しく、調査担当者は「地鎮に伴うものと推測されるが、あまりに数が多い。何らかの儀式に用いられたのかもしれない」と話している。

 町教委は28日、現地説明会を開き、計40人が見学した。見学した富山考古学会の西井龍儀理事(79)は「北陸地方を見てもここまで大きな柱穴や土器が大量に見つかった基壇は珍しいのではないか。今後の調査に期待したい」と話していた。

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