議員は落ちたら「タダの人」!?議員のセカンドキャリアとお金のリアル②(前板橋区議会議員 南雲由子)

議員という仕事には、落選または引退後のセカンドキャリアという課題がある。若者や女性など多様な人が挑戦するには、先が見えないことがハードルの一つになるのではないか…区議会議員を8年、今年4月に区長選挙に挑戦、落選を経験した筆者が、議員のセカンドキャリアを模索するため、その後の「転職活動」を3回にわたりレポートする。

1回目では議員のお金と働き方について書いたが、筆者は落選後「副業可」を条件に転職活動で40社以上を受けた。最終的に希望通りの、議員経験も活かせる仕事が決まったが、議員のキャリアが民間で評価されにくい壁も感じた。この経験を詳らかに書くことが誰かの参考になれば、また同じ境遇の人を勇気づけられれば嬉しい。

前回の記事はコチラ→議員は落ちたら「タダの人」!?議員のセカンドキャリアとお金のリアル① (前板橋区議会議員 南雲由子)

「転職活動」

筆者の今後の政治活動は白紙だ。選挙は一人ではなくチームで挑戦したことだし、「次も頑張って」という声も多く頂く。もし今後また挑戦しようと思う時が来たら、その時は自分にブレーキをかけないようにしたいと思うし、一区民としての活動は続ける。しかし、初めて区議に立候補した時に、コップの水が溢れるように、社会への思いが溢れて行動に移した。そのコップの水は、自分の身の丈より大きな挑戦をやり切って、空っぽになった。今後は民間から社会に出来ることを、と思った。

5月からは心身の疲れを取りつつ、議員在職中に立ち上げた、デザインとイベントの合同会社の仕事と、知人のコンサルタント会社の業務委託の仕事を始めた。やりがいはあったが、経済的に安定しないことと、今後10年のキャリアを考え、7月頃から「副業可」を条件に正社員の転職活動を始めた。士業や特別な資格もなく、美大卒業後フリーランスでいることが多かった筆者にとって、初めての「ガチ」転職活動だ。

官民共創のプレイヤーとしての元・議員

転職活動は、官民共創や地方創生、社会課題解決をキーワードに、コンサルタントやプロジェクトマネージャー職を中心に模索した。年収600万円以上で副業可、子育てのことを考えると出来ればテレワークが多めなら嬉しい。

官民共創は、重要なキーワードだった。議員在職中から、元議員の先輩が立ち上げた官民共創のコンサルタント会社のプロジェクトに関わらせて頂くこともあり、そこで学んだ経験が大きい。行政は、行政だけで担いきれないことを民間と共創したい。企業側も新しいビジネスチャンスとして行政と仕事をしたいが、行政独特のルールが多い。両者の間には「翻訳者」が必要で、元議員は、両方を理解したつなぎ手になり得る人材だ。

40社以上の書類選考に落ちる

だから当初は、転職活動もすぐ決まると甘く考えていた。しかし、実際に転職サイトから選考を受け始めると、「コンサル実務経験3年以上」「事業会社で公共と仕事をしたことがある」など経験が必須で、地域の現場で同じようなことをやってきたとはいえ、実績がなかった。また「行政や公共機関での職務経験」という求人も多いが、想定されているのは行政職員で、書類選考も通らない。民間では議員のキャリアは全く評価されないのではないか、と感じたこともあった。加えて筆者の場合、副業可の条件も幅を狭くしていたが、そこはこだわりかった。

転機になったのは、ヘッドハンターと呼ばれる、個別に面談して求人を紹介してくれる方と会い始めたことだ。転職サイトを通じて、ヘッドハンターからメッセージが届き、オンライン面談を経て、条件に合う求人を送ってもらう。複数話したヘッドハンターの一人から受けた「議員という仕事が、民間の仕事でどんな汎用性があるか」というアドバイスが転機になった。議員として「何を」実現したかではなく、「どう」実現したかを可視化することで、結果が出始めた。レポートの最終回に詳しく記録する。

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