議員は落ちたら「タダの人」!?議員のセカンドキャリアとお金のリアル① (前板橋区議会議員 南雲由子)

選挙に落ちたらどうなる!?議員秘書、他の選挙に挑戦する、など落選後の可能性は無限だが、議員としての経験は民間で評価されにくく、議員という仕事には、スポーツ選手のように、その後のセカンドキャリアをどうするかという課題がある。上の世代では生涯現役も多かったが、議員をキャリアの選択肢として、若者や女性など多様な立場の議員が増えるには、入口があって出口がないままでは、挑戦を妨げる一つのハードルになるのではないだろうか。

優秀な人材が、普通の生活者が、民間と政治との間を行ったり来たりできる社会になれば……そのために、東京都板橋区の区議会議員を8年務めた後、今年4月に板橋区長選挙に挑戦し、落選を経験した筆者が、その後の「転職活動」について3回にわたりレポートする。

はじめに:区議会議員はいくらもらえるか?

落選後の「転職活動」を考える前提として、はじめに区議会議員はいくらもらえるか。また保険や働き方について書いておく。

自治体によって様々だが、筆者が務めた板橋区議会の議員報酬は、月60万円、年収約1000万円である。実際は税金を引き、手取りで月52万円。そこから事務所家賃(50%政務活動費で残りは自己負担)など政治活動に月10万円程を使っていたので、年約1000万円は「年収」というより「年商」というイメージで、手元に残るのは月40万円程。民間でいえば、年収600万円程の生活レベルになる。

また議員には、会社の社会保険が全くない。個人で国民健康保険に入るが、国保は収入が高いと保険料が高額で、筆者の場合、在職中にパートナー、子の3人家族で、保険料が月7万円超になったこともある。

副業はしても良い。報酬が固定されたフリーランス、といった働き方で、自分でペースも決められる。筆者は、初当選時から、議員をお金のためにやるのではなく、自立した状態で続けたいという考えを持っていたため、議員在職中にママ友と2人で合同会社を立ち上げた。元々個人事業主としてやっていたデザインとイベントの企画運営の会社で、パート代程度の副収入を得ていた。

選挙にいくらかかるかと落選後の負担

4年に一度の選挙費用も計算しておく必要がある。制度として、お金がなくても選挙に出られるように、ポスター印刷や選挙カー等に公費が出るとはいえ、当選を目指す以上、自己資金が必要になるのが実情だ。

政党や地域によって様々だが、筆者の場合、区議会議員選挙にかかった費用は1回200〜250万円。区長選挙は1000万円弱かかった。区長選挙では個人からの寄付が合計100万円弱あったが、残りは自分で、住宅ローンや教育費のための貯金+家族からの借入を使った。

1000万円弱の貯金を使い、100名以上のボランティアの方が参加してくださった。区長選挙は筆者にとって「お店を一軒オープンした」くらいの規模で、貴重な経験だった。でもそのお金は落選すれば、なくなる。

また元議員からよく聞くのが、落選後1年の税金が高いことだ。前年度の収入で計算されるため、落選後収入が減り貯金も無くなった中、精神的にも現実的にも負担は大きい。

さて区長選後、正直、政党などから、政治家としてより大きな選挙に挑戦しないかとお声かけ頂くこともあったが、筆者は一旦政治から離れて、民間で仕事をしたい思いが強かった。7月頃から副業可を条件に転職活動を始め、最終的に9月末に希望通り、議員経験も活かせる仕事が決まった。複数の転職サイトやエージェントを利用して、40数社に履歴書を送り、3社面接まで残った「ガチ」転職活動だ。議員の経験が民間で評価されにくい現実も、どうすれば伝わるかのヒントも経験した。後半では、その転職活動についてレポートする。

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3回目はコチラ→議員は落ちたら「タダの人」!?議員のセカンドキャリアとお金のリアル③ (前板橋区議会議員 南雲由子)

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