不登校、退学も…「高1クライシス」って何? 原因と親がすべき対処

「高1クライシス」という言葉を聞いたことがありますか?

高校へ入学したばかりの生徒が、学習や生活面での変化に適応できず、不登校になったり、退学したりしてしまう現象のことを指してそう呼びます。

それまで楽しく学校生活を送っていた明るい子でも、高校入学をきっかけに不登校になるというケースもあるようです。

「小1プロブレム」「中1ギャップ」などの言葉もあるように、新たな環境に身を置くタイミングでは子どもも不安を感じやすくストレスが大きいので、適応するまでに何かしらのトラブルが生じることが多いもの。

では、「高1」ならではの注意すべき点はあるのでしょうか。

「高1クライシス」の原因と、親の対処法について詳しくご紹介します。

大きな環境の変化がきっかけに?「高1クライシス」の原因

1:学区が広がり、通学時間も長くなる

中学まで地元の公立学校に通っていた子どもは、高校から学区が広がり、歩いて行ける距離にはない場所にある学校まで通うことになるケースが多いです。

そのため、通学に電車やバスを利用するなど、今までよりも通学時間が長くなります。朝と夕方の混雑する時間に公共交通機関を利用するのはそれだけで疲れますし、それまでになかった環境下でストレスがかかります。

中学校よりも授業数も増えて使う教材も増え、通学カバンの重みも増しています。重たいカバンを抱えて混雑した電車やバスで朝夕の往復は、それだけで疲れてしまい、気力が湧かなくなる原因になり得ます。

また、高校は部活動も本格化するため、部活に入っている子は帰りが遅くなることも多く、慣れるまでは通学が負担に感じることもあるでしょう。

2:人間関係が大きく変わる

学区が広がったことによるもうひとつ大きな変化が、中学までの固定化された人間関係ではなく、新たな人間関係を構築する必要があること。

中高一貫校に通っているのでなければ、大体の子どもは高校進学で今までの友達と離れるケースも多いのではないでしょうか。

こういった環境の大きな変化により、高校進学のタイミングでは特にストレスがかかります。周囲に顔見知りが少ない子ほど、新しい環境になじめるか不安を感じやすい時期でしょう。

3:授業についていけない、成績が上がらない

高校は自分のレベルに見合ったところを選んで、またはちょっと背伸びして受験勉強を頑張って入学するため、自分と学力レベルの差があまりない学生が集まっています。

そのため成績が上がりにくく下がりやすいことが多く、特に中学まで上位をキープしていた子であれば自信を喪失してしまうことも少なくありません。

学習の進度も早く、量も多いため、授業についていけなくなることも。そのことでやる気が削がれて高校生活への意欲を失うケースもあります。

子どもが「高1クライシス」に陥ったら…親がすべきこと

1:つらかったら学校を休んでもいいと伝える

なかなか新しい環境になじめずに大きなストレスを抱えている子どもに「もっと頑張れ」とお尻を叩くような声かけは逆効果です。

まずは親は味方であるということを感じてもらうことが重要。学校に行き渋っているときは「休んでもいいよ」と伝えることで、「行かなければ、でも行きたくない」と葛藤している子どもの気持ちが少なからず楽になるはず。

親としては、「このまま不登校になったら…」という不安からつい、無理やりにでも行かせる選択をとってしまいがち。でも、まずは子どもと対立するのではなく、子ども側に立って寄り添う姿勢を見せましょう。

今後どうしていくという話し合いをするためにも、子どもが「親に心を許して話せる」環境を作る必要があります。

2:頑張りを認める言葉がけをする

新しい環境下で、授業についていけない、人間関係をうまく構築できない…など、自信を失いかけてネガティブになっている子どもには、なるべく少しの頑張りでも認めるような声かけを。

「朝起きることができている」「宿題をきちんとやっている」「こんなに重たいカバンを持って毎日頑張って通学している」など、できているところに目を向ける声かけをしましょう。

子どもが自信を失っているときに、いくら褒めたり認めたりしても親の言葉がストレートに響くことは少ないかもしれませんが、「あなたを見ているよ」というメッセージを少しずつでも感じとってもらえることが重要です。

3:家は子がリラックスできる場所だと考える

学校から帰ってきた子どもが何をするでもなくダラダラと寝ころんでいたり、勉強もせずに自分の好きなことだけやっていたりすると、つい「怠けてないで○○したら?」など、小言を言いたくなってしまうもの。

でも、高1クライシスの原因にもなっている「通学時間の長さ」や「授業の大変さ」を考えても、高校に行って帰ってくるだけで疲れ切っている場合もあります。

家でも親に怒られたり、「ああしろ、こうしろ」と命令されたりしていると、リラックスする暇がなくますますストレスがたまることに。

親自身が子どものダラダラした態度にストレスを感じないためにも、「高校で頑張っている分、家では休憩して力をためているんだな」という心構えで、子どもが家で何もしていないように見えても、まずはゆっくり見守ってあげてはいかがでしょうか。

小1、中1に続いて、また大きな環境の変化があるために起こる「高1クライシス」。心身ともに大きく成長する時期でもあります。頑張って環境に適応しようとする子どもを、親として温かくサポートしていけるといいですね。

(ハピママ*/ Mami Azuma)

© ぴあ朝日ネクストスコープ株式会社