被爆者が描いた拘置所の壁画 保存を求め見学会開催 広島市

広島拘置所には巨大な壁画が描かれています。しかし、建物が取り壊されることになり、その行方が注目されています。

被爆者の画家が絵に込めたのは「命の大切さ」。絵を保存しようと、遺族らが活動しています。

巨大なクジラや鯉などの生き物が躍動し、江戸時代の祭りの様子が生き生きと描かれています。

壁画があるのは、広島拘置所です。

29日、全長およそ200メートルの壁画の見学会が開かれました。

作者は広島出身の画家、入野忠芳さん。

壁画は広島城築城400年の記念事業として1989年に完成しました。

■入野忠芳さんインタビュー

「動物も太陽も天も地も草も木も、とにかく生きとし生けるもの全部を書き込んでみたい」

被爆者である入野さんが絵に込めたのは、「崩れゆくものの中に芽生える、力強い生命力」です。

色あせや痛みが目立つようになったため、2009年からは、がんに侵されながらも修復に取り組みました。

■入野忠芳さん

「生命の尊重が平和なんだとどこかで伝われば…。伝わればいい」

4年をかけた修復が終わった直後、入野さんは、蘇らせた壁画を残して亡くなりました。

その広島拘置所が来年度以降、建て替え移転のため取り壊されることになりました。

遺族らは会を立ち上げ、壁画を歴史的な文化財としてデジタル化し、陶板画にして残すよう広島市に要望しました。

29日、その機運を高めようと初めて開かれた見学会には多くの人が訪れました。

■見学者の女性

「どのような形でも良いので残していけたらいいんじゃないのかなと。広島の大事な文化遺産じゃないのかなと思います」

■入野泰子さん

「活気ある昔の広島の情景をみなさんに見ていただき、こんな広島があったんだと感じてほしい」

原爆を体験した画家が人生の最後に残した作品。

どう残すべきなのか、壁画が問いかけています。

【2023年10月30日放送】

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