EASL千葉ジェッツ第3戦展望――アウェイで外国籍スターが万全のTNTトロパンギガをしのげるか?

10月11日に船橋アリーナで行われた、EASL2023-24シーズンのグランドオープニングを飾る千葉ジェッツ vs TNTトロパンギガの一戦は、ホームの千葉Jが93-75と18点差をつけて快勝を収めるという結果で終わった。その後千葉Jは、18日にチャイニーズ・タイペイで台北富邦ブレーブスにも85-82で勝利し、現在グループAの単独首位に立っている。

この試合では富樫勇樹が、第4Q残り2秒の決勝弾を含め3Pショット18本中9本を沈め、38得点を稼ぐ大活躍。チャイニーズ・タイペイの有力新聞として知られる自由時報の公式サイトでも「富樫勇樹轟9顆三分彈兼準絕殺!(富樫勇樹、ほとんど伝説になりそうな3P弾9発炸裂!)」という見出しが躍り、ほかの地元メディアでも広く報じられていたことが検索エンジンを見ると感じられる。

千葉JのEASLにおける次戦は11月1日にフィリピンのサンタローサ・スポーツ・コンプレックスで行われるTNTトロパンギガとの再戦だが、この試合に向けてのフィリピンにおける報道も活発だ。例えば、フィリピンを代表する総合紙のひとつであるフィリピン・デイリー・インクワイアラーのオンライン版は、11日のTNTトロパンギガの敗戦を「Undermanned TNT drops EASL opener, loses to Japan’s Chiba Jets(主力を欠くTNTがEASL開幕戦を落とし、千葉ジェッツに敗れる)」という見出しで報じていた。1900年創刊でフィリピン最長の歴史を持つマニラ・バレッティンやスポーツ関連の有力媒体スピン、タイブレーカーなども、論調としてはTNTトロパンギガがまだチームとしてできあがっておらず、実力を出し切れていなかったことに重点を置く内容が多かった。

「次はしっかり戦い切らなければ」と敵将ラスティモサHC語る

次戦で「左利きのコービー・ブライアント」とも呼ばれるロンデイ・ホリス=ジェファーソンが本領を発揮する展開は、千葉Jとしては避けたいところだがどうなるか(写真/©EASL)

それでは次なる11月1日の対戦はどうかというと、これはフィリピンでは11月5日に開幕するPBA(Philippine Basketball Association)の直前となり、本来の力を図るべき舞台となる。フィリピン・デイリー・インクワイアラーの13日付けのオンライン版では、「After EASL loss, Jolas focuses on getting TNT in PBA shape(EASLでの敗戦後、ジョーラス[ジョージョー・ラスティモサHCのニックネーム]のフォーカスはTNTをPBAで戦える状態にすること)」と題した記事で、ラスティモサHCの「コンディションも上がっているので、次はしっかり戦い切っていかないといけません(We will be better off finishing games when we get in shape)」というコメントを紹介している。ラスティモサHCは、前半44-45と粘りながらハーフタイム以降持ちこたえられなかった船橋アリーナでの試合後会見で、「後半はガス欠でした」とプレシーズンのコンディションの悪さを敗因に挙げていた。上記の13日付記事でのコメントには、地元での再戦で同じ結果を受け入れるわけにはいかないという意欲が込められている。

マニラ・タイムズのオンライン版は10月27日付で、「TNT hosts Chiba, eyes payback as EASL shifts to Sta. Rosa, Laguna(TNTがEASLでラグナ州サンタローサに千葉Jを迎え、借りを返す機会に臨む)と題した記事を配信した。ここでは、前回の対戦を欠場したフィリピン代表のシューター、カルバン・オフタナの復帰や、前回はチーム合流直後のプレーとなったクインシー・ミラーとロンデイ・ホリス=ジェファーソンの外国籍コンビが格段に良いコンディションでプレーできるだろうこと、トレーニングキャンプを経てラスティモサHCも自信を深めていることが伝えられている。

カギとなるホリス=ジェファーソン、ミラー、オフタナへの対応

クインシー・ミラーは全開の千葉J戦でゲームハイとなる22得点を挙げた(写真/©EASL)

CNNフィリピン支局は、10月26日付の「TNT Tropang Giga eyeing redemption vs Chiba Jets in EASL home game(TNT)トロパンギガ)」と題した記事で、TNTトロパンギガのアシスタントを務めるサンディー・アレスコパチャガの「We just concluded a training camp in Inspire in Laguna and a big point of emphasis for us was getting in better shape(ラグナ州のインスパイアでトレーニングキャンプを終えたばかりですが、とにかくコンディションを高めていこうということを強調して取り組んできました)」というコメントを紹介していた。アレスコパチャガAコーチはやはり、元NBAのホリス=ジェファーソンとミラー、そしてアジア競技大会で61年ぶりの金メダル獲得に貢献したオフタナの名前に言及しており、この3人が40分間全力を出し切ることが、勝利に向けた一つのカギと捉えているようだ。

ワールドカップ2023アジア地区予選でのカルバン・オフタナ(写真/©FIBAWC2023)

ミラーとホリス=ジェファーソンは千葉Jとの初戦でそろって35分以上プレーし、ミラーが22得点に6リバウンド、ホリス=ジェファーソンが15得点に9リバウンドと一定以上の存在感は示していた。調子が上がらなかったのは3Pショットで、ミラーが5本中1本のみ成功、ホリスの方は9本のアテンプトすべてがミスに終わった。逆に言うと、この14分の1が14分の6程度になり、オフタナが調子の波に乗ると、18点の差は即座に打ち消されてしまいそうだ。それを思うと、「I think right now we’re in a better shape of course(もちろん、今の我々はずっといい状態ですよ)」というアレスコパチャガAコーチのコメントに不気味さが増してくる。

EASLフィリピン初開催のお祭り騒ぎがアウェイ感を強める?

今回はフィリピンでの対戦という完全アウェイで千葉Jが本来の力を発揮できるかという点も見どころだが、その観点ではEASL初開催であることが、さらにその“アウェイ感”を強める効果をもたらす可能性もありそうだ。会場となるサンタローサ・スポーツ・コンプレックスでは、試合とは別にシンガーやヒップホップ・ダンサーを招いてのパフォーマンスなどの催しが予定されているという。

EASLのCEOで共同創設者でもあるマット・ベイヤー氏は、「What we want to do is put a stamp on it just like other geographies that the experience is uniquely Philippines(ほかの開催地と同じく、我々としてフィリピンならではの足跡を残したい)」と意欲的。「We are trying to create a special atmosphere(特別な雰囲気を生み出したいと考えています)」と話している。

チームとしての経験値を高めながら勝利をつかむチャレンジ

さて、こうしたTNTトロパンギガ側の情報とは別に、千葉Jの調子はどうか。Bリーグ2023-24シーズンにおける戦況は、10月29日までの9試合を終えた時点で5勝4敗のB1東地区3位だ。開幕節にアウェイで長崎ヴェルカに連敗を喫するなど、近年の常勝軍団らしからぬ不安定な序盤戦ではあるが、富樫が平均21.0得点でリーグ4位、5.6アシストもリーグ3位とハイレベルなパフォーマンスでチームをけん引。フロントラインでは、開幕節のGAME2から欠場が続いたジョン・ムーニーが、直近の2試合で続けて20得点以上と10リバウンド以上を記録するなど、頼もしい活躍を見せている。

EASL開幕戦で3Pショット6本を沈め18得点を奪った金近 蓮や、富樫のバックアップとして成長中の小川麻斗ら若手が安定感を増してくれば、自然とチーム力も高まるだろう。序盤戦とEASLは、彼らにとって経験を積む貴重な機会に違いない。それが海外遠征ともなれば経験値はいっそう高く、成長を後押しする要素になりそうだ。

そんな側面を含むチームとしての成長に、勝利という結果が伴うかどうか。ここまでの2試合のような爆発力を披露するのは簡単ではないだろうが、千葉Jにとって海外遠征での2度目のテストに注目しよう。

TNTトロパンギガとのEASL開幕戦で大活躍した金近 蓮(写真/©EASL)

☆10月11日のEASL開幕戦、千葉ジェッツ vs TNTトロパンギガ戦ハイライト

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