思い通りに動かない日もある 人間国宝が語る芸の道 巧みな技も披露

舞台で人形を操る技を披露する桐竹勘十郎さん(宇治市槙島町・京都文教大)

 人形浄瑠璃文楽の人形遣いで人間国宝の桐竹勘十郎さん(70)が、京都府宇治市槙島町の京都文教大で講演し、江戸時代から続く文楽の歴史や人形を操る技術を語った。演目も披露し、巧みな人形の動きで参加者を引きつけた。

 桐竹さんは2013年から同大学客員教授を務めている。講演会は同大学臨床物語学研究センターが主催し、学生や市民ら約120人が集まった。

 03年に父の名を継いで3代目勘十郎を襲名した桐竹さんは、女形をはじめさまざまな役柄をこなす。世界各地で公演するなど活躍して、21年に人間国宝に認定された。

 講演では、人形を遣った芸能は千年以上の歴史があり、3人で1体を操る文楽の技術は1734年に考案された記録があると紹介。「その時から人形の遣い方は今も変わっていない」と説明した。

 人形を小刻みに震わせることで笑いを表現したり、顔を隠して恥ずかしさを強調したりと、こまやかな感情の表現方法を解説した。長年続けていても思い通りに人形が動かない日もあるといい、「精神的な部分が大事。いつも丁寧に人形に接することを心がけている」と述べた。

 講演の後、八百屋の娘の悲恋を描いた「伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)」と、猿回しが登場する「近頃河原達引(ちかごろかわらのたてひき)」のそれぞれ一場面を演じた。弟子2人と息を合わせ、女性のしなやかな所作やコミカルなサルの動きを表現し、参加者が見入っていた。

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