質店、時代とともに 高騰続く金製品、「終活」に活用も 変わらぬ「安心」提供続く 茨城

利用客から預かる時計を査定する五位渕猛社長=つくば市東新井のつくばや質店

品物を預かる代わりに顧客に融資する質店。店舗数は減りつつあるものの、アクセサリーや高級時計など定番の品々に加え、近年は「終活」で生前に持ち物を整理しようと持ち込む人も。所有権が質店に移った「質流れ」や買い取り商品に付加価値を見いだして売り出すなど、時代に応じた事業で経営を拡大する動きも出ている。

質店は、質屋営業法に基づき、都道府県の公安委員会から許可を受けて営業。質料は1カ月ごとに融資額に加算され、支払いなく満3カ月の期限を過ぎると、品物の所有権が店に移る決まり。代わりに、顧客は元金と質料の返済を免れることができる。

「つくばや質店」(茨城県つくば市東新井)によると、持ち込まれる商品は、金券やアクセサリー類をはじめ、需要の高いブランド品などさまざま。中でも、新型コロナウイルスの流行や物価高などを受けて高騰が続く金製品、プレミアが付いて高値で取引される高級時計などは買い取り価格が上昇。需要の高い「iPhone(アイフォーン)」などアップル社製品が持ち込まれることも珍しくないという。

同社社長の五位渕猛さん(42)は、質入れの件数が増加傾向にあり、「インフレで家庭で眠る品物が高く売れる」と話した。遺品整理や終活を兼ねて利用する人も増加している。一方で、近年は不意に来訪した業者から適正価格よりも低く貴金属などを買い取られる「押し買い」や、優良誤認とも取れる誇大広告が問題化しているという。

顧客から品物を預かり、それに見合う金額を貸し付ける質店の業態は鎌倉時代から続いているとされる。しかし、警察白書などによると、ピーク時の1950年代には全国に約2万店あった店舗は、2022年には約2500店と激減した。

1912年創業の「和田質店」(同県水戸市柳町)会長の和田公一郎さん(73)は「50~60年代は水戸市内で30店ほどあったが、現在では4店のみ」と話した。県内全体でも25店にとどまるという。

同社は商品に付加価値を付ける工夫として、買い取りや質流れとなった着物を海外でアロハシャツに作り直し、国内に逆輸入するなど、独自の取り組みを展開。減少傾向が続く質店の中で、県内3店舗運営と事業拡大を図っているという。

一時的に金策に困った人々への「安心」提供も続いており、和田さんは「病気の子どもを病院で受診させるため、母親に融資したこともあった」と話した。

消費者金融などの普及を背景に減少する質店の今後について、和田さんは「庶民が小規模資産をお金に代えられないのは不自由。いつでも手の届くところに質店がないといけない」と存在意義を強調する。

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