国内アパレル市場に関する調査を実施(2023年)~2022年の国内アパレル総小売市場規模は8兆591億円、前年比105.9%、2年連続で前年を上回り、回復基調に~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内アパレル市場を調査し、品目別や販売チャネル別の動向、アパレルメーカーや小売業などのアパレル産業の現況を明らかにした。

1.市場概況

2022年の国内アパレル総小売市場規模(紳士服・洋品、婦人服・洋品、ベビー・子供服・洋品計)は前年比105.9%の8兆591億円で2年連続で前年を上回った。

販売チャネル別では百貨店、専門店における実店舗の回復が顕著である。コロナ禍による外出自粛や行動制限等で、停滞していた外出機会が増加したことにより、買い替え需要や新調需要が回復し、実店舗の利用が増えた。特に都市部の人流が増加し、なかでも百貨店では高額商品の売れ行きが好調だった。

一方のEC(インターネット通販)はコロナ禍では成長が顕著であったが、需要が落ち着き、成長率は鈍化傾向である。実店舗での購買需要が一要因であるものとみる。

2.注目トピック~2022年アパレル業界の全体動向

2021年からアパレル企業大手各社はコロナ禍で定着したEC(インターネット通販)と実店舗に相互送客を促すOMO (Online Merges with Offline)戦略に力を入れている。

アパレル企業はコロナ禍による外出自粛や行動制限、店舗の休業、営業時間短縮などの対応をせざるを得なくなり、実店舗の需要が激減したが、EC需要は大幅に拡大した。こうしたなか、アパレル企業大手各社は従来、実店舗とECチャネルが連動することなく商品の販売をしていたが、実店舗の顧客をEC顧客に、EC顧客を実店舗の顧客とすることで、顧客にとって購入しやすい環境をつくり、顧客が離反しないよう注力している。これにより売り上げの拡大と安定化を図っている。
少子高齢化、人口減少局面にある国内市場において、アパレル企業はOMO戦略を生き残るための重要な戦略として位置付けている。

3.将来展望

国内アパレル総小売市場規模(紳士服・洋品、婦人服・洋品、ベビー・子供服・洋品計)は2025 年ごろまでにはコロナ禍前の水準まで回復するとみる。現下、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症に移行したことで行動制限が求められなくなったことから、オケージョン需要(慶弔事ほか)、外出需要が高まり、落ち込んだ分の売り上げをアパレル企業各社は回復させている。こうした傾向は短期的には継続するとみており、今後2年ほどでコロナ禍前の水準に近づいていくと考える。

一方で、長期的には少子高齢化、人口減少の影響を受け、2025 年以降市場規模は緩やかに減少していくとみる。ただし昨今の物価上昇に伴う販売単価の上昇が人口減少や物価高による消費減退に伴う購入数量の減少を補填することができると仮定すれば、一時的に金額ベースでは市場は右肩上がりで推移するが、長期的には市場規模は減少傾向にあるものとみる。

© 矢野経済研究所