医師死亡…死去した母「なんとなく動いた」と話す息子発砲、ボイスレコーダーも録音していた 法廷で音声公開…銃撃直後に悲鳴や怒号「駄目だって!」 医師は心臓破裂、泣き叫ぶ女性「先生!」

立てこもり現場付近を調べる県警の捜査員ら=2022年1月29日午後1時すぎ、ふじみ野市大井武蔵野

 埼玉県ふじみ野市の住宅で昨年1月、医師=当時(44)=が散弾銃で射殺されるなど医療関係者3人が死傷した立てこもり事件で、殺人や殺人未遂などの罪に問われた住人の無職の男(67)の裁判員裁判の第2回公判が30日、さいたま地裁(小池健治裁判長)で開かれ、検察側が事件当時の音声データなどを証拠として提出した。自暴自棄になった男が「全員撃つつもりだった」と語るなど、事件の生々しいやりとりが明らかになった。

 この日公開された音声は6点で計約1時間40分。男は途中でイヤホンを一時的に外したり、時折目を閉じたりしながらも終始落ち着いた表情で音声を聞いていた。

 最初の音声は事件当日の夜。男がボイスレコーダーで録音していたとされ、医師ら7人が男宅を訪問したところから始まった。男は落ち着いた口調で、亡くなった母が蘇生するかもしれないとして「淡い期待がある」「胸がなんとなく、なんとなく(動いた)。ただ、脈を測ると全然」などと発言。その後は、医師らが男の母のためにおりんを鳴らしたと思われる音も収録されていた。

 男が医師と男性理学療法士を銃撃した直後は悲鳴や怒号が飛び交う中、男性の「110番してください!」「駄目だって!」という声に「先生!」と泣き叫ぶ女性の声が入り乱れ、もみ合うような物音も聞こえた。

 銃撃後に立てこもった男と説得する警察官による電話音声も公開された。男は警察官に対し、母を亡くした絶望から自殺をする旨の発言を繰り返し、「どうせ死ぬなら今まで許せなかったやつを道連れに…」と話したり、訪れていた医師ら7人のうち2人を除いて「全員撃つつもりだった」と打ち明けた一方、「今後の希望もないし、だからと言って人を巻き込むのは良くなかった」と後悔の念を語る一幕もあった。

 起訴状などによると、男は昨年1月27日、自宅で散弾銃を発砲して医師を心臓破裂で死亡させ、男性理学療法士=当時(41)=に重傷を負わせた。さらに、男性医療相談員=同(32)=に催涙スプレーを放ち、路上にいた別の男性医療相談員=同(42)=に別の散弾銃を放って殺害しようとしたとされる。

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