【イケタビ #3】鈴木勝吾が“クロアチアの旅”で見つけたもの

鈴木勝吾

今、注目の推しメンたちにこれまでの旅の思い出や、気になるおでかけスポットを聞く「イケタビ」。

印象的だった土地、お店、食べ物、おみやげなど、旅ならではの思い出について、写真と共に語っていただきます。

【フォトギャラリー】鈴木勝吾の撮り下ろし写真とクロアチアの旅風景

第3回に登場していただくのは11月9日(木)から上演される舞台「世濁声」(よどみごえ)を作・演出する鈴木勝吾さん。

「あの旅での風景は今でも忘れられない」と語る鈴木さんがクロアチアで感じたこととは?

プロフィール

鈴木勝吾

鈴木勝吾

1989年2月4日生まれ。神奈川県出身。09年、「侍戦隊シンケンジャー」のシンケングリーン/谷千明役として俳優デビュー。以降、ドラマ・映画・舞台などで活躍。主な出演作に、ミュージカル「薄桜鬼」シリーズ(毛利亘宏/西田大輔演出)、ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』(小林香演出)、ミュージカル『憂国のモリアーティ』シリーズ(西森英行演出)、S-IST Stage『ひりひりとひとり』・『鋼の錬金術師』(石丸さち子演出)などがある。2024年1月には少年社中 25周年記念ファイナル 第42回公演 【テンペスト】にも出演。◆Instagram ◆X(Twitter) ◆Threads

クロアチアの“青の洞窟”と紅に染め上がる夕日

鈴木勝吾

──今までで一番、印象深かった旅行についてお話いただけますか?

2014年に行ったクロアチア旅行です。

実は仕事で行ったんですけど「旅をしているところを撮影する。それについて僕が文章を書く」という内容だったので、ガチガチに100%仕事という感じでもなく。

10日間、写真を撮られつつ僕も自分で撮りつつ、最終的には“青の洞窟”という場所に向かって楽しみながら、いろいろなところに行きました。

──“青の洞窟”って、イタリアにある有名な海中洞窟ですよね?

イタリアから見て、アドレア海の対面に位置するクロアチアにも“青の洞窟”はあるんです。

両方行った方によると、クロアチアのほうがキレイらしいですよ。船で洞窟の入口に入っていくんですが、低いからかがむ必要があります。

だんだん中が広がっていったところでやっと起きるんですが「はい、振り返っていいよ」って言われて振り返ると、もうそこは青、衝撃的な青! 青以外に感想が浮かばないほど青いんです。

クロアチアの青の洞窟

──想像を絶する景色ですね!

クロアチアの町
クロアチアの風景

最初に行った村で、ビスカ(ブランデーの一種)というお酒を買い、旅の間ずっとこの瓶を持ち歩いていました。

旅の大きな目的のひとつが、これをどれだけ風情よく飲むかの場所探しになり、結果「こんな場所あるんだ!」の連続に。もう何を撮っても美しかったです。

誰も知らない町で何者でもない自分が得たもの

鈴木勝吾

──旅の楽しみと言えば食べ物。クロアチア料理はいかがでしたか?

ワインがすごく美味しいし、料理はいろんな文化が混ざっていてこれも美味しい。

特にトリュフが絶品でした。この旅をきっかけに僕はトリュフ教徒になりましたよ! でも日本のトリュフはそんなに美味しく感じないんですよね。

──ひとり旅のような時間も作れたとか。

そのころ僕は、俳優であることに疲れていて、自分が自分でいることがちょっと難しくなった時期だったんです。

周囲にバレるとかそういうことではなくて、どこに行っても自分は「俳優の鈴木勝吾である」ということに言いようのない何かを抱えていました。

でもクロアチアで日本語はもちろん英語すらあまり通じない中、“何もない自分”でいられたことがいい方に作用して……。

──生身の鈴木勝吾、でしかない環境。

カメラマンさんに何も飾ることなく「鈴木勝吾ってこんなことを考えていて、こんな顔もするんだよ、役とか関係なしにね」っていう写真を撮ってもらって、それを事務所に「いいんじゃない、それも」みたいに受け入れてもらったのも大きかったです。そこからなんか、変わりました。

演じるときに楽になったというか。

クロアチアの夕日
クロアチアで出会った人

──具体的にはどんな風に楽になったのでしょうか。

自分があるから、逆に言うと平気で自分を捨てられるというか。この旅を経て役者・鈴木勝吾、自分・鈴木勝吾、そして役柄の3つのバランスがすごくよくなりました。

──その経験、まさに旅の醍醐味ですね!

有名な観光地に行くような旅行も、僕はすごく好きなんです。

でも「いつもの自分じゃなくていいよ」という境地にたどり着いて、より自分の中の自分を再発見できるような体験が、旅の良さだと僕は思っています。

何か体に刻まれるものが、持って帰れるというか。クロアチア旅行はまさにそんな旅でした。

──話を聞いていて、クロアチアに行きたくなりました。

僕も、もう一度行きたいと思っています。

考えること、声をあげること、行動することについて

鈴木勝吾

──最後に最新の舞台公演についてお伺いします。

2023年11月、安西慎太郎さんと2人で作・演出・出演をする『響宴・「世濁声(よどみごえ)」』は、約1時間の食事の後に演目が始まるという、ちょっと大人の公演です。

どういった経緯で企画が進んだのでしょうか?

昨今、自分のいる演劇界を含めた芸能界で、時代の歪みというか「これでいいのかな、この環境は」という問題が見えてきました。

俳優である以上、個人的に戦っていかなきゃいけないとも思いますが、僕は「人にものを言う立場の人間こそ、ちゃんと人に耳を傾けるような世界であって欲しい」というのが大きなところにあって。

そのうえで実際に自分に何ができるかと考えたときに、物作りを始めねばという結論になりました。

単純に慎太郎と「2人で何か作りたいね」というのもあったんですが、前提はそんな感じです。

──まず自分で行動を起こそうと思ったんですね。

現在、海外の戦争や国内政治の現状などで、僕ら界隈の世界の拡大版のようなことも、起きているじゃないですか。なのでそこに対して作品として、ひとつ楔を打っていきたいと思ったんです。

しかし僕が作品を通してメッセージを届けるとはいえ、見てくださる皆さんが、何かをもらうだけの立場ではないとは言いたいです。

──と言うと?

『世濁声(よどみごえ)』っていうのは、その、俗世と濁世というのも掛けているんですけど、僕らが出せる声が透き通った正しい声とは思っていません。

作品の中でも言っているんですけど、自分たちが真っ白というのもおかしな話で、声をあげるのが偉いとかでもなく、「声をあげていかないといよいよヤバいんじゃないですか」っていうのを伝えたいんです。

──その危機感を感じて欲しい。

僕らが作品を通して声をあげるのは、シンプルに世の中へのフラストレーションが原因です。

ただそれを人を幸せにする何かにしなきゃいけないのが、物作りをする人の覚悟だと僕は思うので、今回の作品が出来上がりました。

鈴木勝吾

──今、公演が近づいてきてどんなお気持ちでいますか?

この作品を見たお客さんそれぞれが、つまんないとか、うるさいとか、難しいとかでもいいので、意見を持つことで考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。

高尚な意見を持たなければとか、的外れな意見は意味がないとか、そんなことは絶対にないので。

事実、仲のいい俳優さんにゲスト出演を頼んでいるのですが、「これってさ、こういうことかな」と予想だにしなかった解釈が飛んでくることが多々あります。

それに対しては「ぜんぜんそれでもいいです!」って返事をしているんですよ。

見たら納得すると思うのですが、僕らの世界観にそんなに限定した解釈を求めていませんので。

舞台「世濁声」(よどみごえ)

【公演日】2023年11月9日(木)~11月19日(日) ※11月14日(火)休演日
【会場】DisGOONieS
【あらすじ】

「人ならざるものは僕なのか。世界なのか」

転がる真実に人は眠り。世界もまた沈黙で答えている。

それでも僕らは信じよう。世界はまだこんなにも美しいと。

これは一つの希望が目覚める物語。

「君が思う、そして僕が思う。だからこそ君は君だし、僕は僕でいられるんだ。」

「人の記憶を思うんだ。それがいつか心になる」

記憶を持たぬ男。全てを知る男。

いつかの時、どこかの場所で二人で織りなす、真実の為の与太話。

これは今こそあなたの未来へ届けたい言葉の群像でもある。

(Medery./ 中尾 巴)

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