グラタンをスプーンで割るとマカロニではなく、桃が出てきました。
しかもその下にはクレムブリュレが!
グラタンはグラタンでも「フルーツのグラタン」(800円、以下すべて税込)なんです。
作っているのは、たまプラーザ駅から徒歩10分の『常乃菓舎(ときのかしゃ)』というケーキ屋さん。
桃が入った「フルーツのグラタン」を食べたのは7月。
「桃が終わったら、次はブドウのグラタンを作ります」
と教えてくれたのは、シェフパティシエの高須健さん。
ブドウのグラタンも食べてみたい。
せっかくなので、作っているところを見せてもらうことにしました。
ココットにクレムブリュレを敷き、シャインマスカットとブラックビートと甘夏を入れる。
その上に生クリームをしぼった後、メレンゲを添える。
バーナーでメレンゲを炙り、グラタン風に仕上げます
これをオーブンに入れずに、バーナーで表面を炙ります。
仕上げに粉糖をかければできあがり!
桃のグラタンもおいしかったけど、ブドウのグラタンもいいなあ。
皮ごと食べられるブドウを使っているので、噛んだらそのままごっくん。
洋食屋のマカロニグラタンも好きだけど、ケーキ屋のグラタンもおいしいゾ!
それにしてもなぜパティシエが、「フルーツのグラタン」を考えたの?
「パリパリにキャメラリゼしたクレムブリュレは、甘すぎであまり好きではないんです」
そこでメレンゲを炙って仕上げるグラタンを考案したのだそうです。
「炙りすぎるとメレンゲがこげます。でも、それが怖くて炙るのを手前で止めてしまうとだめ。こげたらやり直せばいいぐらいつもりで炙っています」
ある程度しっかりと炙ることで香ばしさが出るだけでなく、甘さがしまるのだそうです。
フルーツは季節で変えるといいます。
ブドウの次は、初冬はラ・フランス。春先からはイチゴを使う予定。
「『フルーツのグラタン』は、うちのスペシャリテのプリンと交互に作っています」
食べてみたい方は、作る日を電話で確認したほうがいいかも。
いつ行っても『常乃菓舎』にはユニークなケーキが並んでいます。
「農家さんが直接送ってくれる、四季折々のフルーツを使ったケーキがうちの特徴です」
イチゴ、ブルーベリー、桃、洋梨、メロン、ブドウ、リンゴ、スイカ、ライム、甘夏、湘南ゴールド、清見オレンジ、梅、夏みかんなど、「一年中フルーツに追われている」そうです。
この日、「フルーツのグラタン」以外にもブドウを使ったケーキが並んでいました。
「ブドウのフランパイ」(950円)です。
「クリームを4層に仕上げています」
底からエッグタルト、サワークリーム、シャインマスカット、カスタードクリームと生クリー
ムを合わせたもの、ブラックビート、シャインマスカット、一番上が生クリーム。
パイ生地こそサクサクだけど、しっとりした味わいがこたえられません。
「ケーキは手づかみが一番おいしいと思います」
秋といえば、モンブランの季節。
『常乃菓舎』では、年間を通して「モンブラン」(800円)を作っています。
一見、ごくふつうのモンブランですよね?
ところが、断面を見るとちょっと変わっていることがわかるはず。
上から順番に見ていきます。
イタリア産と茨城産の栗で作ったクリーム。
白いのは、生クリームとマスカルポーネを合わせたもの。
白いクリームで栗を包んでいます。
その下には、カスタードクリームを塗ったスポンジケーキが敷いてありました。
一番下はバタークッキー。
この複雑なモンブランをどう食べるとおいしいのか。
高須シェフに教えてもらいました。
「自宅で食べるなら手づかみが一番(笑)。なぜなら作り手の意図をはっきりと理解できるから」
もう少し詳しく説明してもらえませんか?
「ケーキを部分的に食べると甘すぎたり、甘みを感じないこともあります。それは、全体を食べるとちょうど良いバランスで作っているから。
たとえば、マスカルポーネを合わせた生クリームは、砂糖をひかえています。上の栗のクリームだけを食べると甘いかもしれませんが、一緒に食べるとちょうどいい甘さになります」
クリームが主体のモンブランは、やわらかいものが多いですよね。
高須シェフはモンブランの一番底にバタークッキーを入れています。
「サクサクのバタークッキーも一緒に食べると、やわらかいクリームと硬いバタークッキーが入り混じり、複雑な味わいを愉しめると思います」
「キャラメルナッツタルト」もおいしいゾ
「ケーキの写真を撮ったら、ケーキが崩れてもいいし、倒してもいいので手づかみで食べてください」
もちろん、人前でそんな下品な食べ方はできないはず。
なので、ひとりで、あるいは家族で、恋人とおいしいケーキを食べるときは、手づかみで。
「赤信号みんなで渡れば怖くない」の精神で、手づかみで食べてください。
手づかみで食べるお菓子の代表が、「フィナンシェ」(280円)。
アーモンドの香りが豊か。表面がこんがりと焼けていてバターのいい香りが愉しめます。
幸せになりたければ、『常乃菓舎』の「フィナンシェ」を食べるといいかも。
最後に、「フィナンシェ」以上に幸せにしてくれるケーキを紹介します。
「キャラメルナッツタルト」(420円)です。
ピスタチオ、アーモンド、ピーカンナッツが香ばしいんです。
サクサクした食感もサイコー。
7月に初めて食べて、今回リピートしました。
食べてみたいケーキがあれば予約がベター。
高須シェフのスイーツをいろいろ食べてきたけど、いつも期待以上。
わざわざ足を運ぶ価値があります。
【常乃菓舎】店舗概要
住所/神奈川県横浜市青葉区美しが丘4-19-1
電話/ 045-479-9271
営業時間/11:00~20:00
定休日/火水木曜
駐車場あり
(うまいめし/ 中島 茂信)