なぜ人事労務にテクノロジーを活用するべきなのか(杉野 愼)

杉野 愼(すぎの・しん)㈱TECO Design代表取締役▶1982年生まれ、広島大学大学院修了。医療系ITベンチャーでの営業を経て大手社会保険労務士事務所で給与計算やM&A、IT推進事業などに従事。2019年にTECO Designを設立し、600社超の中小企業でのHRテック導入・運用実績を持つ。

人事労務分野のデジタル化は遅れていると言われています。営業や製造部門に比べてROI(投資対効果)が見えづらく、直接的に利益に結びつきにくいため“コストセンター”とみなされることも多く、投資が少ない企業が多いです。

そのため、企業での優先度は売上・利益に直結する製造現場や営業現場への投資が高くなり、間接部門の中でも会計・経理よりも利益への貢献度が見えづらいため、人事労務領域への投資が遅れる傾向にあります。

では人事労務分野がデジタルテクノロジーを積極的に取り入れることがなぜ重要なのでしょうか。2つ理由があります。

①モチベーションや生産性を高めるため

人事労務のデジタル化が大きく遅れたままでいると、企業としての競争力が低下し、従業員のモチベーションや生産性の低下にもつながりかねません。

②答えが一律ではないからこそデータ化によるサポートが必要

人事労務の業務は、1つの答えが定まっていないことが多い領域です。同じ事象であっても従業員ごとに解釈や希望が異なることが多々発生します。従業員の多様性やそれぞれのニーズを的確に把握し、対応するためにも、定型的な業務は自動化するなどを含め、データベースや分析ツールの活用が不可欠です。

■デジタル化すべき業務

多様性が求められる現代において、人事労務担当者の業務は定型的なものから非定型的なものへとシフトしてきています。この変化に対応するためには、例えば紙やハンコ、郵便を使ったアナログな方法で行われている業務のデジタル化は欠かせません。

デジタル化するべき代表的な業務を表に示しました。テクノロジーの活用は人事労務分野においても多くの利点をもたらします。現代の競争社会で先を行くためには、このテクノロジーの導入は避けて通れない道といえるでしょう。

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