<レスリング>八田忠朗氏が全米レスリング殿堂に選出される

全米レスリング殿堂は10月30日、2024年の殿堂入りメンバーに男女の米国代表チームのコーチを数多く務めた八田忠朗氏を選出した。来春に授賞式が行われる。日本人で選ばれたのは、全米学生(NCAA)3度優勝、1964・68年オリンピック優勝の小幡洋次郎さん(旧姓上武)に続いて2人目。

▲2021年東京オリンピックへ向けて、米国の通訳としてチームに同行した八田忠朗さん。右は女子57kg級のヘレン・マルーリス=米国の直前合宿の岐阜・中津川市

同氏は、日本レスリングのベースを作った八田一朗・日本協会第3代会長の次男。神奈川・慶応高校を卒業したあと米国へ渡り、オクラホマ州立大学の選手として1965年にNCAA王者へ。1964・66年の同大学の優勝に貢献した。他に、全米選手権で2位が3度ある。

選手を引退したあとは多くの世代の指導に携わり、1968・84年オリンピックで日本チーム、1972年オリンピックでメキシコ・チーム、1988・92・96年オリンピックでは米国チームのコーチをそれぞれ務めた。

女子でも、最初にオリンピックに採用された2004年アテネ大会と2008年北京大会にコーチとして参加。世界選手権やワールドカップでのコーチを含めれば数え切れないほどの重責をこなし、2008年ワールドカップでは、教え子にタックル返しを伝授。吉田沙保里選手の連勝記録にストップをかけた。

2020年東京オリンピックの際には、米国に事前合宿の地として岐阜・中津川での実施を仲介をするなど、日米の両国にわたってレスリングの発展に寄与している。80歳にして、現在でも地元チームの指導に携わり、日本でも定期的にクリニックをやっている(関連記事)。

本職は高校の美術教師を続けた。絵画 3 点と彫刻 1 点は全米レスリング殿堂に展示されており、2019年2月には、レスリングを通じて社会に貢献していると評価され、傑出した精神とリーダーシップを発揮したオクラホマ州立大学の卒業生に送られる「ギャラガー賞」を受賞(関連記事)。今年4月には、父の母校である早大に肖像画を贈った(関連記事)。

▲早大に飾られている“日本レスリングの父”八田一朗氏の肖像画

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