全世界興収No.1スタート!巨匠スコセッシ監督が“アメリカの黒歴史”を映画化『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』なぜ“オスカー最多ノミネート”と注目されるのか?

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』画像提供 Apple

巨匠マーティン・スコセッシ監督がレオナルド・ディカプリオと6度目のタッグを組み、“アメリカ黒歴史“の映画化に挑んだ『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(絶賛公開中)が、全世界興収No.1スタートとなり、世界各国で大反響を得ている。このたび、“2024年開催のアカデミー賞で最多ノミネートと呼び声が高い”本作について、毎年アカデミー賞とノミネートの予想がかなりの割合で的中している、Xフォロワー19万超の「映画情報 オスカーノユクエ」に聞いてみた。

オスカー最多ノミネートと注目される理由は?

分析①
マーティン・スコセッシが監督した『ミーン・ストリート』以降の長編劇映画作品で、【作品賞】へのノミネートは「23本中9本」。実に39.1%という高確率だが、これがレオナルド・ディカプリオ×スコセッシ監督のタッグ作品になると、「5本中4本=80%」というとんでもない確率にはね上がる。このコンビでは、『シャッターアイランド』以外はすべて【作品賞】へノミネートされていることになる。(なお、エンタメ作品として賞レース向きではなかった『シャッターアイランド』は、スコセッシ作品史上オープニング成績1位の成績を残している)

そして『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、ディカプリオとロバート・デ・ニーロが、スコセッシ作品で初共演を果たしたことも話題で、デ・ニーロ×スコセッシ監督のタッグ作品になると「9本中4本」がノミネートされており、確率44.4%。トリプルタッグとなれば、その確率はさらに増すのでは。その上、子役のディカプリオをスコセッシに推したのが、『ボーイズ・ライフ』で共演したデ・ニーロ本人!という…約30年前のエピソードも手伝って、ノミネートされないほうが不思議なくらい。

分析②
ディカプリオ×スコセッシ監督のタッグ作品は、これまでに『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アビエイター』が10部門、『ディパーテッド』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』が5部門にノミネートされた。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』のノミネート数は、海外トップメディアの専門家たちによる賞レース予想サイト「Gold Derby」の作品賞予想では、10月25日の時点で「①作品(2位)、②監督(2位)、③主演男優(2位)、④主演女優(2位)、⑤助演男優(2位)、⑥脚色(1位)、⑦撮影(2位)、⑧編集(2位)、⑨美術(4位)、⑩衣装(3位)」となり、このサイトが予想する全13部門中、10部門で上位4作品以内にランクされている。原作があるため資格がない脚本賞と長編アニメ賞を除くと、専門家たちは助演女優以外すべての部門にノミネートされるだろうと予想していることに。(「Gold Derby」は、作曲、主題歌、音響、メイク、視覚効果の予想はなし)今回の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、10部門ノミネートされた『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アビエイター』と同じく「ヒストリー(歴史もの)」にカテゴライズされる作品のため、題材としても大量ノミネートが期待される。

分析③
興行的な成功もアカデミー賞ノミネートに大きな追い風となる。スコセッシ監督×ディカプリオ作品は『ギャング・オブ・ニューヨーク』以外すべて興収1億ドル超えというヒット作揃い。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』も長尺というハンデをものともせずOP興収2,300万ドル超えの大ヒットスタートとなり、1億ドルは超えてくる見込み。

<スコセッシ作品 オープニング成績上位4作品>
『シャッター・アイランド』OP興収:$41,062,440(2991館)/総興収:$128,012,934
『ディパーテッド』OP興収:$26,887,467(3017館)/総興収:$132,399,394
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』OP興収:$23,253,655(3628館)/総興収:これから
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』OP興収:$18,361,578(2537館)/総興収:$116,900,694

2024年度のオスカーの行方はいかに?

アメリカ恥の歴史=黒歴史を映画化

御年80歳!巨匠マーティン・スコセッシ監督が「アメリカ恥の歴史=黒歴史」を映画化。本作は、2017年に刊行された米ジャーナリスト・デイヴィット・グランの実録ノンフィクションを元に脚色されている。FBI創設のきっかけとなった過去に例をみない凶悪犯罪“オセージ族連続怪死事件”は1920年代のアメリカで実際に起きた事件。

企画当初、白人のFBI捜査官を主人公にし、事件を捜査追求していく物語として描かれる想定だったが、スコセッシ監督やディカプリオらの意向で、主人公を変更。変更することで、原作では描かれてない加害者目線でドラマを再構築した。いわば、スコセッシ版「福田村事件」。“恥の歴史”が忘れられてしまう前に映画化するというスコセッシの強い意志がある。スコセッシは言う「何が起きているのか知っていながら、何の行動も起こさなければ、歴史が悪い方向に変わってしまうことがある。私たちも共犯者になりうることになる。だからこそ声を上げなければならない。現在起きていることを考えると、とてもナーバスになる。だから私たち若い世代に伝え続けなければならない。歴史は繰り返すんだ」

FBI創設のきっかけであり、FBIに利用された事件

本事件をきっかけにしてFBIの地位は確固たるものになっていく。それはなぜか?1932年に、ラジオ番組「ザ・ラッキー・ストライク・アワー」とFBIとの共同制作で解決後の事件のラジオドラマを作った。初期のドラマエピソードのひとつが「オセージ族殺人事件」がベースになったものだった。多くの被害者をだしたこの事件は、FBIのプロパガンダとして利用された。FBIは、アメリカ全土で“正義”を拡張していくために、さまざまな事件を宣伝利用したのだ。

ネイティブ・アメリカンについて描かれた、これまでにない作品

作品の中で、ロバート・デ・ニーロ演じる叔父ヘイルから、ディカプリオ演じるアーネストへ、肌の色について語られるシーンがある「赤はすきか?」本作でヒロイン・モリーを演じるリリー・グラッドストーンは、ネイティブ・アメリカンの血を引いている。アカデミー賞は「白すぎるアカデミー」と揶揄された時代を経て、多様性を目指す動きが顕著で昨年の同賞ではミシェル・ヨーがアジア系を自認する俳優として初めてアカデミー賞主演女優賞を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が話題になった。

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は絶賛公開中

マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演『カジノ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年11月放送

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