「ナイスショットはテークバックで決まる」 平田憲聖 ボクの打ち方LESSON Vol.2

学生時代は、右ドッグレッグした練習場の右端打席から、ネットすれすれの球を打っていたという平田(撮影/大澤進二)

男子ツアーの「U-25世代」で、いまホットな選手といえば平田憲聖の名が挙がるだろう。今週は「ZOZOチャンピオンシップ」トップ10の資格で、PGAツアー「ワールドワイドテクノロジー選手権」に出場。簡単にボギーを打たない平田のゴルフは、すでにベテランのようなふてぶてしさすらあるが、そんな“ボギーフリー”を生む平田のショット力の源流はどこにあるのか。彼のスイングの打ち方、考え方について、じっくり話を聞いた。2回目は平田のスイングの良し悪しを決める「テークバック」について。(全3回/取材・構成/服部謙二郎)。

悪くなる時は大抵「テークバック」に原因がある

ハーフウェイバックの「右ひじのたたみ」はチェックポイントのひとつ(撮影/大澤進二)

―プロコーチと契約を結んで、定期的にスイングのチェックをしてもらうメリットは大きいと思いますが、平田プロがそうしない理由はなんでしょうか。

コーチを信頼していないわけではないんですけど、言われたことを鵜呑みにしてそのままやるタイプでないので……。何かを言われたら、自分なりに噛みくだいて、それがどんな動きなのかイメージして、どうやったら自分のスイングに取り込めるか、そもそも取り込んで大丈夫なのかということを考えないといけないんで、それだったら最初から自分で考えてやればいいんじゃないかと思っちゃうんですね。

―かなり早い段階で、そういう考えに至ったんですよね。中学生くらいだとか。それでも学生時代から好成績が残せたと。

ある程度はそうですね。もし全然ダメだったら、専属コーチをつけるという考えもあったかもしれませんが、「自分で考えてやる」方式で、試合になると何とかできてきたので、今はこのままでいいと思っています。

テークバックで右ひじが張ったまま上がるのはNG(写真右)(撮影/大澤進二)

―調子が悪くなったときのチェックポイントはありますか?

悪くなるときは、ほとんどテークバックが原因なんです。テークバックでクラブの通り道、手の位置、いろいろな部分が微妙にずれると、それがスイング全体に影響してしまうんですね。例えばトップで、自分のイメージでは「この辺にある」と思っているシャフトが、実際はそこにはなくて、クロス(シャフトがターゲットラインと平行な位置より右を向く状態)になっていることがよくあります。体が動きすぎている(回りすぎている)からそうなることもあるし、右わきが少し空いてしまっていることもあったり、原因はその時々でいろいろあるんですが、クロスになると切り返しでクラブがループして、インパクトで100%、手元が浮きやすくなるので、そこはとくに気をつけています。

―微妙なずれを、普段は動画でチェックしているわけですね。

そうです。あとは鏡を見ながらとか。始動直後の動きは重点的にチェックします。ヘッドをインに引きすぎたり、アウトに上げすぎたりしないように、フェースも開きすぎたり、閉じすぎたりしないように気をつけていますね。ハーフウェイバックで後方から見たら、フェース面が上体の前傾角と平行というのが、ひとつの目安です。

理想はクラブがプレーン上に上がり前傾とフェース面が平行(写真左)、フェースが開き過ぎてもダメ(写真中)、クラブがアウトに上がり過ぎてもダメ(写真右)(撮影/大澤進二)

―ラウンド中は、そのあたりをどうやってチェックしていますか?

ラウンド中は基本的には、スイングのことは考えていません。ただ、ミスショットが出たときに、「今、気持ち悪かったな」とか、「何かおかしいな」という感じがずっと残るんですね。それで、応急処置的に「ちょっとこっちに上げてみよう」ということはあります。

―それで、ラウンドが終わってから「気持ち悪さ」の正体を探ると。

そうですね。始動とか、手の位置とか、トップの収まり方とか、気持ち悪い部分を、一つひとつ気持ちいいところにはめ直していく作業になります。

プレーン上にそのまま上がるとトップがレイドオフに(写真左)、クロスするのはNG(写真右)(撮影/大澤進二)

―ズレが出る部分というのは、ドライバーもアイアンも同じですか?

やっぱりクラブが長くなるほど、気持ち悪さが出やすくなります。アプローチに関しては、ほとんど出ません。

―スイングの調整は、たとえば「7番アイアンでやる」とか、決まりがありますか?

ラウンドで気持ち悪さが出たときは、その番手で、実際にボールを打ちながら調整していきます。でも、スイングの修正箇所が見つかって、ある程度動きを固めなきゃいけないときはアイアンでやります。8番アイアンが多いですかね。自分にとっては、上と下のちょうど中間の感覚が8番なので。

右腕をゴムで体に縛り付けて練習する(撮影/服部謙二郎)

―何か練習器具を使ったりしますか?

テークバックで右ひじがうまくたためなくて、ひじが張ったままトップまで上がっちゃうことがあるんで、そういうときはゴムで右腕を体に縛って打ったりします。ゴルフ専用のゴムじゃなくて、「100均」みたいなところで買った、普通のゴムひもです(笑)。これだけは、大抵バッグに入ってますけど、それ以外の練習器具は持ってないです。そもそも、いわゆる「ドリル」みたいな練習はほとんどやらないんです。クラブの通り道とかの、感覚と実際のズレを修正するのがおもな練習なので。もし、コーチがいたら、「これやって」みたいなことがあるんだと思うんですけど、基本的に自分でやってるので、それがないんです。

平田憲聖のスイングを斜め後ろから!右ひじの動きをチェック

Vol.3「参考はマキロイよりミンウ・リー」 に続く

取材協力/茨木ゴルフセンター

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