「JTの森 鯉が窪にいみ」2023年秋 森林保全活動 〜 想像以上に重労働だった少花粉スギ植栽を体験

倉敷市を流れる一級河川「高梁川(たかはしがわ)」。

花見山(標高1,188m:新見市)を源流としており、新見市では高梁川の豊かな水環境を支える森林の水源涵養(すいげんかんよう)や土砂流出防止の機能をさらに発揮させるための森林整備をおこなっています。

倉敷市在住の筆者は「高梁川の源流域」に足を運んだことがありませんでした。

そんななか、昨年(2022年)日本たばこ産業株式会社(以後、JT)が新見市と協働で取り組んでいる「JTの森 鯉が窪にいみ」で森林保全活動に参加し、現流域を見ました。

そして、今年(2023年)も参加する機会をいただいたので、2023年10月14日(土)に開催された、「JTの森 鯉が窪にいみ 2023年秋の森林保全活動」のようすを紹介します。

「JTの森 鯉が窪にいみ」とは

たばこ、医薬、加工食品事業を中心とした事業活動をおこなっているJTグループは、葉たばこや紙、野菜など植物を中心とした自然由来の原材料を事業で利用しています。

このため、自然環境保全の一環として、森林保全活動を「JTの森」と称して進めており、2023年10月現在は全国9か所で活動中です。

岡山県には「JTの森 鯉が窪にいみ」があり、鯉が窪湿原(こいがくぼしつげん)を中心とした森林保全活動をおこなっています。

鯉が窪湿原
オグラセンノウなど、300種類を超える植物が自生する地域で、「鯉が窪湿性植物群落」として1980年3月6日に日本の天然記念物に指定されている。

「JTの森 鯉が窪にいみ」は、岡山県が推進する「企業との協働の森づくり事業」を活用し、2016年11月から約6年間にわたり新見市と協働で森林保全活動をおこなっています

2016年からの1期目と、対象森林区域を変更した2022年からの2期目に分かれており、2023年秋の森林保全活動は2期目の第2回活動として実施されました

2023年秋の森林保全活動の内容

2023年秋の森林保全活動は、「少花粉スギ植栽」をメインに以下の流れでおこなわれました。

  • 開会式(主催者挨拶/記念撮影)
  • 森林保全活動(少花粉スギ植栽)
  • 昼食&米粉のピザ作り
  • 森の課外授業(moritomiraiカードゲーム)

1番・2番が午前、3番・4番が午後の活動です。

岡山県・広島県・島根県を中心としたJTグループの従業員、取引先の従業員、およびその家族を中心に、関係者を含めて97名が参加し、5班に分かれて活動をおこないました。

開会式

開会式ではまず、来賓のかたから以下の順番で挨拶がありました。

  • 新見市長 戎 斉(えびす ひとし)さん
  • JT執行役員 藤原 卓(ふじわら すぐる)さん

その後、参加団体やスタッフの紹介があり、いよいよ森林保全活動がスタートです。

森林保全活動(少花粉スギ植栽)

開会式の会場から、徒歩5分程度の会場に移動します。

そこには、つい最近木が伐採されてできたと思われる広大な敷地が。

植栽する場所

森林保全活動として、ここに少花粉スギを植栽するというのが、今回の活動です。

少花粉スギとは
花粉をほとんど出さないスギの品種です。

もともと生育しているスギのなかから、花粉の少ないものを選び、それらを研究して、国が定めた花粉量の基準をクリアした品種を少花粉スギとして登録されたものです。
今までの花粉発生量に比べ、花粉発生量は杉の場合1%以下のものです。

◆現地で配られたリーフレットより引用

最初に植栽方法について説明がありました。

  • 20cm程度穴を掘る
  • 少花粉スギのコンテナ苗を植える
  • 土をかける
  • 根元を踏み固める
  • もう一度土をかける

コンテナ苗
コンテナと呼ばれる特別な容器で作られる苗木のことで、底面に穴があいていて、根が空気に触れると成長が止まるため、根切り作業が不要です。

根に土がついた状態で植えるため、従来の植栽時期(春や秋)以外でも、活着率が高い。また、植え穴が小さくて済み、植栽が容易。植栽当年から成長が期待できる等の利点があります。

◆現地で配られたリーフレットより引用

工程としてはこれだけです。

全体で600本の植栽をするため、一人のノルマは「10本程度」と聞きました。

正直「植えるだけだし、楽勝でしょう」と思いましたが、その考えが甘かったことをすぐに思い知らされます……。

その後、5班に分かれて植栽作業をおこないました。

まず、鍬(くわ)で穴を掘ります。

これが思った以上に大変です。

その後、コンテナ苗を植えます。

コンテナ苗
コンテナ苗を植える

つい最近伐採された土地なので、根っこなどが多く残っており、簡単に土を掘れません

「畑」ではないんです。

最初は楽しく活動していましたが、途中からは皆さん無言になり真剣そのもの。

作業は皆さん真剣
親子で頑張っています
コンテナ苗
スタッフのかたも手伝ってくれます
最後に踏み固めます
これでようやく1本
子ども一人で頑張る姿も
なんとか一人で植えられました
徐々に作業が進んでいきます
いつしか無言で頑張る人が増えました
1時間ほどで600本の植栽が終了

約60分の活動で汗だくになりながら、なんとか600本の植栽を終えたときには歓声があがりました。

昼食&米粉のピザ作り

終了後は「道の駅 鯉が窪」に移動し昼食タイムです。

栗ごはん、汁物、新見三昧串、米粉ピザ、ピオーネが用意されており、森林保全活動でお腹はペコペコなので参加者の皆さん笑顔で食事をしていました。

栗ごはん、汁物
新見三昧串
米粉ピザ

また、米粉ピザの手作り体験があり、子どもたちは好きな具を載せたオリジナルピザを作ります。

ピザの手作り体験
焼いてもらいます
焼きたてのピザが完成

昼食後は、敷地内の新見市 哲西支局にある会議室に移動し森の課外授業に取り組みました。

森の課外授業(moritomiraiカードゲーム)

午後からは森の課外授業として、カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」をおこないました。

ファシリテーター(進行役)は、一般社団法人HALOMY 代表理事 神永英義(かみなが ひでよしさん)です。

カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」は、山の所有者、森林組合、猟師、行政職員、住宅メーカー、学校の先生などが、仕事や生活のアクションを繰り返すなかで、変化する森について考えるゲームです。

配られたカード

当日は、全体では2チーム、各チーム4人程度のグループで山の所有者などのプレイヤーとなり、グループ内および他のプレイヤーと話し合いをしながらゲームを進めました。

行動を決めるとそれに応じたカードが返却される

約1時間30分、4ターンに分けたゲームをします。

皆さん初めてなので、最初はルールが理解できず手探りでした。

ゲーム中の会場

しかし、時間の経過とともに「〜を一緒にやりましょう」など話し合いをする機会が増え、両チームとも森・まちの状況が変化していきます。

開始時
終了時

ゲームではありますが、事業をおこなうことで森がどのように変化するのか、整備の重要性などを学べました。

その後、閉会式がおこなわれ「2023年秋の森林保全活動」は閉会となりました。

おわりに

今回の保全活動は小学3年生の娘と2人で参加しました。

整備されている「畑」ではない場所で、「木を植える」という体験は新鮮であると同時に、大変なことであることを実感したようです。

筆者自身を振り返っても初めての体験で、想像以上の重労働に驚きました。

木を伐採したら、新たに植えればよい。

都市部に住んでいるとそんなふうに思いがちですが、カードゲーム「moritomirai」を通じて、木は植えるだけではなく、適切な管理をすることで豊かになることを学びました

森という資源は多くの人がかかわることでできあがり、私たちはその恩恵を受けていることを忘れてはいけないと感じました。

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