イセエビが宮城県沖に 海水温の上昇と黒潮の北上の影響 海の異変

地球温暖化により海水温が上昇する中、宮城県の海では高級食材のイセエビが増加しています。その実態と海の生き物がどう変化しているのか、海に潜って調べました。

石巻市の離島、田代島で刺し網漁をしている小谷清一郎さんです。小谷さんが狙っていたのは、高級食材のイセエビです。
これまで網にかかることはほとんどありませんでしたが、数年前から増え始め一度の漁で20匹ほどを水揚げしました。
小谷清一郎さん「最初は3、4年ぐらい前です。カレイを取る網に掛かってきたんですよ、イセエビが。十何匹、20匹近くかかったんだね。網上げててびっくりするほかないもんね」

イセエビが宮城県沖に

イセエビは、千葉県や三重県などが主な産地で関東から南の地域で水揚げされています。近年、関東より北の地域で数が増加しています。宮城県と福島県では、前年の水揚げ量が7.51トンと震災前の2010年の1.95トンと比べ、4倍近くに急増しています。

宮城県での水揚げ量は2021年までは500キロ未満ですが、今後増える可能性があります。小谷さんは先を見据え、持続的にイセエビの漁ができるように早いうちから漁の期間や漁獲量などのルールを作ることが必要と考えています。
小谷清一郎さん「(イセエビ漁が)野放しになって乱獲して、値段が下がるのが一番大変だからね。早くから規制を掛けて、取る人も買う人も食べる人も良い値段で流通できるようになれば良い」

イセエビの増加について水産資源に詳しい東北大学大学院の片山知史教授は、暖かい黒潮の変化を要因に挙げます。
東北大学大学院片山知史教授「黒潮が大蛇行と言って、伊豆沖で非常に南下してそしてうねっている状況です。それが東北にも伝播してるんですけども、(イセエビが)黒潮に乗って東北の海にやって来ることができる」

南の魚が宮城県の海に

冷たい親潮と暖かい黒潮がぶつかる三陸沖は近年、黒潮が北上しているためイセエビをはじめ南の海域の生き物が東北の海に多くやって来ています。
更に片山教授は、10年前と比べて三陸沖の夏場の最高水温が3℃から4℃上昇していて、北上しやすいだけではなく生息もしやすくなったと指摘します。
東北大学大学院片山知史教授「イセエビは暖かい海の生き物です。水温20℃ぐらいが適水温で東北の海で生き残る。生育できる背景としては、東北の海の全体の水温が上がっている」

水温が上がった宮城県の海で生き物はどのように変化したのか、海の中を調べに行きました。
そこには、豊かな三陸の海が育んださまざまな生き物の姿があり、目を引いたのは宮城県の海には生息していないカラフルな南の魚です。暖かい地域から潮の流れに乗って毎年やって来ますが、その数が多く例年より20種ほど多いという報告もあります。岩の隙間にはイセエビの姿もありました。

【画像】カラフルな南の魚が宮城県の海に

死んでしまい、白くなったホヤをウニが食べている様子を、ダイバーの高橋正祥さんが撮影しています。
ダイバーズウォッチの海水温は25.4℃です。海水温の高さは、宮城県の海に元々いた生き物をむしばんでいました。

ダイバー高橋正祥さん「例年だと水温高くても24℃ぐらいなんですけど、1℃から2℃高いのかなと。浅い所、水温高い所のホヤは、結構死んでいる印象がすごいありますね。僕も初めて。結構いっぱい見るので。人間は海が暖かい方が良いと言うが、魚にとって1℃上がるだけで結構大変なことと言われている。まずは(現状を)知って、どうアクションするかということがすごく大事だと思う」
大きく変化する宮城県の海。新たな資源を有効に使いつつ、海を守るために何ができるのか、考える必要があります。

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