「参考はマキロイよりミンウ・リー」 平田憲聖 ボクの打ち方LESSON Vol.3

学生の頃よく球を打った“平田打席”にてパシャリ(撮影/大澤進二)

男子ツアーの「U-25世代」で、いまホットな選手といえば平田憲聖の名が挙がるだろう。今週は「ZOZOチャンピオンシップ」トップ10の資格で、PGAツアー「ワールドワイドテクノロジー選手権」に出場。簡単にボギーを打たない平田のゴルフは、すでにベテランのようなふてぶてしさすらあるが、そんな“ボギーフリー”を生むショット力の源流はどこにあるのか。彼のスイングの打ち方、考え方について、じっくり話を聞いた。最終回は平田が初優勝の直前にとあるプロからインスパイアされた話。(全3回/取材・構成/服部謙二郎)

たまたま同組だった谷原秀人のテークバックからインスパイア

テークバックについて熱く語る平田(撮影/大澤進二)

―プロ初優勝を飾った「ミズノオープン」では、初日に何か「気付き」があったと聞きました。

前半戦は結構、調子が悪くて、スイングも自分の中ではずっと「気持ち悪い」状態だったんです。ミズノオープンは初日、谷原(秀人)さんと一緒だったんです。ハーフが終わったくらいのところで、「谷原さんのあの上げ方いいな」と思ったんですね。後半回りながら、「もうちょっとこうしよう」みたいにイメージを変えて、そこからよくなりましたね。

外から見たら、「どこが変わったの?」というくらいの微妙な差かもしれませんけど、自分の中では、その日の前半と後半だと、体の動かし方がまったく違う感覚でした。

谷原秀人のテークバック(日本ゴルフツアー選手権にて)(撮影/和田慎太郎)

―テークバックの上げ方を変えた?

なかなか説明するのが難しいんですけど、谷原さんのテークバックって、コックが早めで、ヘッドの重さというか、クラブの遠心力でシンプルにクラブが上がっていくんですね。何というか、クラブが仕事をしている感じ。もちろん体も動いているんですけど、それ以上に、シャフトやヘッドが動いていて、そういう感じが自分にはないなと。それで、大げさに言うと、足をあまり動かさずに、グリップエンドを支点にして、手でヘッドを上げていく感じにしました。

椅子に座ったままでも上げられるような、腕の使い方ですね。それまでは、もう全部が動いて、どこにも支点がなくて、全部がぶれているような感じだったんですけど、止める部分を作ったら勝手にコックが入ってクラブが自然に上がるようになりました。

椅子に座ったまま打っている感覚と平田(撮影/大澤進二)

―体と腕、クラブを一体化させて上げるというよりは、クラブの動きを優先させて、そのために腕を動かして、体がついていく感覚でしょうか。

大体、そんな感じです。

―それ以外のプロのスイングも、たとえば、動画を見て参考にするということはありますか。

日本プロで勝つ直前に、よく見ていたのはミンウ・リー(ミンジー・リーの弟)のスイングですね。テークバックの上げ方、インパクト付近の体の使い方、手の使い方などがかなり参考になります。インパクトの手元の低さとか、全然真似できないですけど(笑)。普通に「カッコいいな」って思います。

ミンウ・リーのスイング(ZOZOチャンピオンシップ)(撮影/服部謙二郎)

―やっぱり、自分のスイングと系統が似ているプロのほうが参考になりますか。

そうですね。自分の場合は、トップでクロスに入らない人というのが大前提で、そうすると(ローリー・)マキロイとかは、ちょっとクロスに入るんでダメなんです。僕自身はあの動きがまったくできない。どちらかというと、少しレイドオフ(トップでシャフトが、ターゲットラインと平行な位置より左を向く状態)側にあるものを、そのまま下ろすのがよくて、リーはそのあたりが理想に近いです。

レイドオフの位置(写真左)からクラブをそのまま下ろす意識だ(撮影/大澤進二)

―ジョン・ラームもそういうタイプだと思いますが。

ラームの場合は、始動の瞬間からフラットでレイドオフなトップに一直線で上がるじゃないですか。それが僕にはちょっと難しい。割とオーソドックスに上がっていって、トップで少しフラット(レイドオフ)にクラブが収まるのがいいんです。そこから体を使って手元を低い位置に引き下ろして、感覚的にはシャフトを立てる感じで振っています。

―プロのスイング以外の動画もよく見るんですか?

調子が悪いときは、何かヒントがないかと思って、いろんな動画を見ますね。関西オープンあたりの時期にパターが絶望的に悪かったんですけど、そういう動画を片っ端から見て、そこから実際にヒントをもらって、“めっちゃ”よくなったんです。それがあったから、ミズノオープンも優勝できたと思っています。谷原さんのヒントで、確かにショットはよくなったんですけど、そのときは100点というわけじゃなくて、それ以前にパターがよくなっていたから、ちょっとよくなったショットとうまくかみ合ったという感じですね。

ダウンスイングで特にお腹に力を込めるという平田(撮影/大澤進二)

―プロでもそういうことがあるんですね。

コーチがいないので、何でも自分で一旦、咀嚼してから、自分なりのものに落とし込むというクセがついているのがよかったんだと思います。

―疑ってかかる必要はないけれど、アマチュアの人も、動画の内容が自分に合っているかどうか、ちょっとだけ俯瞰して考える作業は必要ということですね。

はい。そうすれば、今の時代、いろんなところでヒントが見つかると思いますよ。

平田憲聖の7番アイアンスイングを目に焼き付けよう

取材協力/茨木ゴルフセンター

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