坂多い街、高齢者の足に 「地域モビリティ」運行 茨城・日立の諏訪学区

実証事業で運行が始まった「地域モビリティ」=日立市諏訪町

山側の丘陵地に造成された団地が多い茨城県日立市の諏訪学区で1日から、マイカーに代わる新たな移動手段として「地域モビリティ」の実証事業が始まった。住民組織が主体となって学区内を電気自動車で運行し、坂の多い街で暮らす高齢者の生活を支える。先行導入した学区では利用が堅調に推移しており、諏訪学区も来年度の本格運行を目指す。

市内では昭和40~60年代にかけて「山側団地」が整備され、現在は12団地に約1万5千人が暮らし、高齢化率は50%を超える。団地内は急な坂が多く、路線バスの減便や廃止が進む中、既存の公共交通だけでは日常の移動に困る住民も増えているのが実情だ。

地域モビリティはこうした住民の要望に応えるのが目的で、導入は諏訪学区が2例目。自治組織の諏訪学区コミュニティ推進会(持田幸雄会長)が主体となって運行し、市は運転手の人件費や車両リース代、燃料費などを補助する。

電気自動車など車両2台を使用し、自宅から路線バス停留所、交流センターやスーパーなどを結ぶ4ルートを巡回。平日の週3日、予約制で運行する。事前に会員登録(月額千円)した65歳以上が対象で、仮の停留所を約100メートル単位で200カ所以上設定した。

諏訪学区には現在、約2800世帯約6千人が暮らす。同推進会によると、うち半数近くを山側団地の住民が占めるという。本年度は実証事業の位置付けで、運行期間は来年3月29日まで。

同市諏訪町の諏訪交流センターで1日開かれた出発式で、吉成日出男副市長は「この取り組みをほかの地域にも展開していきたい」と意欲。同推進会の持田会長は「地域住民の足を確保しようと進めてきた。来年度から週5日で本格運行したい」と語った。

諏訪学区に先立ち、金沢学区では今年4月から地域モビリティが本格運行している。同じく高齢化が進む山側団地を抱え、共通の課題に向き合う。

市によると、金沢学区の地域モビリティは週5日運行。4~9月末までの半年間で延べ1636人が利用し、1日当たりの利用者数は12.6人。通院や買い物目的の住民が多く、本格運行前と比べて利用者は増加傾向にあるという。

市は「交通事業者とのバランスをみながら、今後も導入を目指す地域を支援していく」としている。

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