エスカレーターには立ち止まって乗るよう義務付けた、名古屋の条例が施行されて1か月が過ぎました。
掲げるキャッチフレーズは「立ち止まり両方乗ろう右・左」です。
10月1日、その名も「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が制定されました。
転落事故などを防止するため、エスカレーターを利用する際は立ち止まることが名古屋での努力義務に。
条例制定は全国2例目、政令指定都市では初めてです。
名古屋市は、この新たなルールを市民に浸透させるべく「なごやか立ち止まり隊」を結成してPRを続けてきました。
そして、条例制定から1か月となった11月1日…。
(報告:平野菫記者)
「午前11時ごろの金山駅です。エスカレーターには皆さん立ち止まって乗っていますが、右側は空けて乗っています」
1日昼前、金山駅で30分観察したところ、歩いて利用する人はごくわずかでしたが、約900人のうち右側に立っていた人は55人。
9割以上の人が、これまでの名古屋の常識通り左側に立っていました。
(20代女性)
「急いでいる人がいるかなって、左に寄っちゃうことが多い」
(60代男性)
「人が先に止まってくれていれば、右にも止まるけど。自分から(右側を)ふさぐのはしにくい。嫌がらせしているのかなと」
また、こんな声も…
(親子連れ)
「2人で横並びになっていたら、後ろから男性に押されて『どいて』って言われて、危ないなって感じたことはある」
構造計画研究所が行ったシミュレーションではエスカレーターに2列で並んで全員が立ち止まって移動した場合と、左側1列が立ち止まり右側は歩いて移動した場合を比較しました。
それぞれ450人が移動を完了するまでの時間を比べると、2列で立ち止まって移動した方が、1分12秒も早く移動が完了したのです。
(構造計画研究所 北上靖大シニアコンサルタント)
「両側で立ち止まって利用した方が全体の移動時間が早くなる傾向」
立ち止まった方が混雑緩和にも役立つことがわかります。と、言いましても…
(名古屋市スポーツ市民局 渡邉弥里係長)
「右側を空けるのは長年で身についてしまった習慣という側面もあるので。右側にも積極的に立ち止まって利用していただくよう、お伝えしていきたい」
そこで、名古屋市は今後、エスカレーターの安全利用を浸透させる為の実証実験を行う準備に入っています。
(来栖川電算 山口陽平取締役)
「こちらはエスカレーターでの利用者の行動を検知できるシステムです」
名古屋市が実施したコンペを勝ち抜いた名古屋市中区の来栖川(くるすがわ)電算、2003年に設立された名古屋工業大学発のベンチャーです。
これまで開発したAI機能を搭載したセンサーは、最長で200メートル先の人の動きを感知でき、立体的に人の流れを捉え解析することができる優れもの。
その技術は中部空港やトヨタスタジアムなどでの人流解析にも役立ったということです。
名古屋市は、このセンサーを使って年明けにもエスカレーターでの実証実験を始めたい考えです。
設置するセンサーは利用者がエスカレーターで立ち止まっているのか、歩いているのかを瞬時に判別できるとのこと。
歩いている人を感知したら「危険なので歩かないでくださいね」といった自動音声で注意を促します。
また、右側が空いている場合のアナウンスは「2列で並んでも大丈夫ですよ」など。
(来栖川電算 山口陽平取締役)
「『右側に乗っても大丈夫だよ』という常識をつくれたら」
名古屋市は来年2月までに数か所の地下鉄駅で、このセンサーを設置する予定で、準備が整ったところから実証実験をスタートさせます。
新たな習慣を根付かせるべく、全国約1000作品の中から決定した最優秀キャッチフレーズは「立ち止まり 両方乗ろう 右・左」です。