初日ワン・ツーのトヨタ小林可夢偉「コンディションが異なっても、競争力は非常に高い」/WECバーレーン

 11月2日(木)、中東バーレーンのバーレーン・インターナショナル・サーキットで、WEC世界耐久選手権の2023年最終戦となる第7戦『バーレーン8時間レース』のフリープラクティスが開始された。TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は難しいコンディションとなった初日の2セッションで、順調なスタートを切っている。

■突然の豪雨。ウエットタイヤのテストも進む

 TGRはすでに前戦富士で5年連続となるマニュファクチャラーズタイトルを手にしており、ここバーレーンはドライバーズタイトル決着の場となる。

 現在、ディフェンディングチャンピオンである8号車GR010ハイブリッドのセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮は、チームメイト7号車のマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペスに15ポイント差をつけてタイトル争いをリードしている。最大39ポイントが獲得できる今大会では、フェラーリAFコルセの2台も、まだ逆転タイトルの可能性を残している。

 正午過ぎに開始されたフリープラクティス1は開始からわずか9分後、この地域では珍しい豪雨を伴う悪天候となり、赤旗が提示された。45分間の中断の後にセッションは再開されたが、この雨により路面は完全なウエットコンディションとなっており、延長されたセッションで2台のGR010ハイブリッドは、ウエットタイヤでの走行テストという新たなプログラムをこなすこととなった。

 このセッションでは、その後ラップタイムを更新できるまでに路面コンディションは改善せず、7号車可夢偉がセッション開始直後に刻んだタイムでタイムシートのトップをキープ。ブエミの8号車がこれに続き、バーレーンの最初のセッションはTGRのワン・ツーで幕を開けた。

ウエットコンディションとなったFP1の様子

 日没後にスタートしたフリープラクティス2までには天候は回復し、路面もドライに。照明に照らされた1周5.412kmのサーキットで、TGRはようやく今大会使用できるミディアム、及びハードのドライタイヤを評価する機会を得た。

 FP1から行われてきた空力やメカニカルのセットアップは、豪雨による赤旗でいったん中断されたものの、この夜のセッションで再開され、タイヤの摩耗が厳しいサーキットとして知られるバーレーンでの最良の妥協点を見出すべく、チームは集中的な作業を続けた。

 FP2では、1時間ほどが経過したところでGTカーのアクシデントにより赤旗が出され、18分ほどの中断の後にセッションが再開。可夢偉がこのセッションで記録した1分46秒851がこの日の最速タイムとなり、8号車はハートレーが同じく夜のセッションで記録したタイムで総合2番手につけた。この日2回のセッションで、TGRの2台は合計159周、860kmを走破している。

 11月3日金曜にはフリープラクティス3と、予選のセッションが予定されている。

 第7戦の初日の走行を終えたTGRのドライバー6名のコメントは、以下のとおりだ。

■「同じようなコンディションにならないことを願う」と平川亮

■小林可夢偉(チーム代表兼7号車ドライバー)

「これまでのところすべてが順調に進んでおり、異なるコンディション下においても、我々のパフォーマンスも非常に競争力が高いように見えます」

「FP2はタイヤ評価において非常に重要で、より理解が進んでいます。我々はGR010ハイブリッドとともにここバーレーンで多くの経験がありますが、ことタイヤに関しては、今季はタイヤウォーマー無しなのでほぼゼロから学び直しです」

「とは言え今日はポジティブな一日で、この勢いを維持できるよう頑張ります」

■マイク・コンウェイ(7号車)

「我々はウエットでもドライでも、すべてのコンディションで力強いように見えた」

「雨はここバーレーンではめったにないことなので、ウエットコンディションでの走行ができたのは幸運だった。最初のセッションでは数周したところで突然空が暗くなり、いきなり大雨になったが、少なくとも我々は、万が一に備えた準備ができている」

「我々7号車が明日ポールポジションを取れればタイトル争いの一助になるし、もちろんそれも狙っている。しかし、決勝へ向けての準備が最優先だ」

■ホセ・マリア・ロペス(7号車)

「興味深く、有意義な一日だった。マイクと可夢偉が素晴らしい仕事をしてくれたおかげで、今日を最速で終えることができた」

「今日はスリックとウエットタイヤの両方で走行した。周回数は少なかったが、結果には満足しているし、明日はもっと周回を重ねたいと思っている」

「いつものように我々の2台は僅差の争いとなっているし、タイトル争いは難しいものになると思うが、レースは何が起こるか分からないし、戦い続ける」

WEC第7戦バーレーン、初日のトップタイムを記録した7号車トヨタGR010ハイブリッド

■セバスチャン・ブエミ(8号車)

「盛りだくさんな一日だった。予選シミュレーションを含め、明日のために多くの周回を重ねた。激戦になることは間違いなく、そのためにもすべてを正しく進める必要がある」

「このサーキットはタイヤの摩耗が非常に激しいので、可能な限り最良のセットアップを見出すことと、正しいタイヤの使用を選択することが非常に重要となる。7号車と8号車でそれぞれ準備作業を分担し、時間を最大限有効に活用しているので、良いレースができることを期待している」

■ブレンドン・ハートレー(8号車)

「雨のコンディションでバーレーンを走るのは初めてで、ここで何年もレースをしてきたにもかかわらず、新しい体験ができた。特に、コース上で水が溜まりやすい場所が見えるなど、興味深い経験だった」

「天候の件を除けば、比較的クリーンな一日だった。ライバルがどう動いてくる分からないが、今のところ我々は速さを示せていると思う」

「さまざまなセットアップや異なるタイヤコンパウンドを試すことができた。このコースはタイヤの摩耗が非常に激しいので、決勝レースではそれが大きなポイントになるだろう」

■平川亮(8号車)

「昼間の雨は、ここでは見たことがないような激しさでした。ウエットコンディションもうまくこなすことができましたが、これからの数日、同じようなコンディションにはならないことを願っています」

「今日は多くの周回を重ねられたので、クルマとタイヤの挙動を把握することができました。タイヤは摩耗が激しいので、決勝レースではそれをうまくコントロールする必要がありますが、全体的には好調なスタートが切れたと思いますし、この調子でプッシュを続けます」

8号車トヨタGR010ハイブリッドをドライブする平川亮

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