「高岡発ニッポン再興」その105 「移住新時代」に新たな戦略を

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・高岡市は人口減少緊急事態宣言を出し、政策を総動員すべき。

・毎年人口1%分ずつ定住者を増やせば、多くの地域で人口は保てる。

・地方移住の「仕事を辞めて年収が減る」という前提は崩れようとしている。

富山県、そして高岡市は人口減少問題にどう取り組むべきか。私は人口減少緊急事態宣言を出し、政策を総動員すべきだと主張していますが、前回お伝えした「持続可能な地域社会総合研究所所長、藤山浩さんの意見も大いに参考になります。6年前に会った時の話ですが、今も十分通用します。

藤山さんは「1%移住戦略」を提唱しています。つまり、毎年今より人口1%分ずつ定住者を増やせば、多くの地域で人口は保てるのです。子供の数も維持できるといいます。毎年100人の村で1人、1000人の村で10人定住者を増やせば、人口を維持できるというのです。

そのためには、毎年1%の所得の増加が必要。その手法は、工場誘致や巨大なショッピングセンターの誘致ではないと、藤山さんは繰り返し論じていました。「地方の人でも、大部分は外部資本のチェーン店で買い物や外食しています。エネルギーも外部から調達しています。それを少し、地場のスーパーや飲食店などに切り替えるだけで、所得の増加が実現できます」。

さらに、移住者を増やすため、現状分析、人口予想、さらには処方箋が必要となりますが、藤山さんは、市町村全体の人口ビジョンだけでは、効果がないといいます。抽象論となり、住民が本気にならないからです。地元住民と役所の職員が、小学校区単位で、きめ細かく、対策を練ることが大事だというのです。そして、お互いの小学校区で、効果があがったところを学びあう必要もあります。

藤山さんによれば、2011年の東日本大震災をきっかけに、都市部から山間部や島しょ部への田園回帰が増えているといいます。その流れに、富山県が乗り切れていないといのです。

それに引き換え、人口の“受け皿”となっているのが、島根県です。中山間地や島しょ部などに流入する見通し。例えば、離島の海士町。「消滅の恐れ」と待ったなしと言われていたが、人口はすでに増加に転じ、2060年には、現在の2倍以上の5千500人になるという。

海士町では、町長が自らの給料を減らし、行財政改革を断行する一方で、地元産物の販売の強化と若者の移住促進策を打ち出しました。こうした行政の取り組みが、若者の田舎志向に合ったのです。

島根県は、高齢化率が全国一という不名誉な地位に長くいたため、定住対策などを必死で取り組んでいます。

私は6年前に、藤山さんから「1%移住戦略」を聞いたのですが、今は当時より、ずっと移住しやすい環境が整っています。コロナをきっかけに、リモートワークが広がったからです。大事なキーワードがあります。「転職なき移住」です。(編集部注:移住に際して、転職経験のない方)令和4年3月、パーソル総合研究所は「地方移住に関する実態調査(Phase1」を発表しましたが、「転職なき移住」が、53・4%に上りました。(注1)

また、移住に伴う年収変化は、58・6%が「変化なし」と回答しています。つまり、これまで地方に移住すれば、仕事を辞めて、年収が減るという見方がありましたが、その前提が崩れようとしているのです。

政府は「転職なき移住」の旗を振っています。その大きな流れをどうとらえるのか。高岡市にとっては大きなチャンスなのですが、ほかの市町村も手をこまねいてはいません。「移住新時代」が到来しました。私は高岡市議会議員として、勝ち抜くための新たな戦略を提言していきます。

注1)編集部注:移住に伴う転職・職務変更について聞いたところ、「職務に変化無し」と答えた人の割合が53.4%だった。

(出典:パーソル総合研究所「地方移住に関する実態調査(Phase1)」)

トップ写真:ほうれん草を収穫する農業従事者 (イメージ:本文と関係ありません)

出典:JUNKO TAKAHASHI/a.collectionRF/GettyImages

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