夜のリンゴ園で食体験を 訪日客向けツアー、来秋実現目指す 青森県五所川原市の若手農家グループ

食かけるプライズの受賞通知書を手にするメンバー。左から長内来矢さん、蒔田さん、土岐さん
五所川原市内のリンゴ園で行われた撮影の様子。完成映像は本年度中に公開されるという

 青森県五所川原市の若手リンゴ生産者グループ「梵珠のもつけんど」の提案するリンゴ園ツアーが、農林水産省の「食かけるプライズ2023」で入賞した。訪日外国人が日本の食文化を深く知ることのできる食体験を表彰する同プライズに、梵珠のもつけんどはライトアップした夜のリンゴ園でバーベキューを楽しむ企画を応募した。ツアー実現に向けた準備も始まっており、メンバーは「課題を一つ一つ解決し、多くの人に来てもらえる空間を五所川原に生み出したい」と意気込む。

 農水省は訪日外国人に日本の多様な食文化を伝え、日本食材の輸出拡大につなげることを目的に、2019年度から同プライズの表彰を行っている。5年目の本年度は全国から108件の応募があり、食かける大賞1件、食かける賞7件、ネクストブレイク賞2件を選んだ。梵珠のもつけんどは、食かける賞を獲得。青森県の団体・企業では初の受賞となった。

 応募した「美味(おい)しい林檎(りんご)ナイトツアー」は、秋の開催を想定。五所川原市の梵珠山麓にあるリンゴ園をライトアップし、訪れた人に同市の市浦牛や馬肉、野菜をバーベキューで味わってもらう。地元産のシードルも提供し、最後は近くの木から直接リンゴをもいでもらい、デザートなどにするという内容だ。

 梵珠のもつけんどは一昨年、同市の若手農家6人で結成。黄色リンゴを使った「幸せの黄色いシードル」の発売や、クラウドファンディングの支援者を対象としたリンゴ園野営体験など、地域のリンゴ産業を元気にするための取り組みを意欲的に行っている。

 同プライズへの応募もそうした活動の一環で、メンバーの土岐彰寿さん(42)は「ライトアップしてみたら、リンゴが宙に浮いているような感じで幻想的だった。インバウンドに対してもアピール力があるのでは-と思った」と話す。

 今回の受賞により、同グループは企画の磨き上げや外国人向けの情報発信について、農水省の支援を得られることになった。

 その一環として、10月20日夜には同市松野木の「梵珠りんご園」の園地でイメージ映像の撮影が行われ、訪日外国人役のモデルが赤々と実ったリンゴに囲まれながらバーベキューを楽しむ様子が収録された。

 あいにくの雨で撮影は難航したが、メンバーの一人である蒔田祥平さん(35)は「ライトアップした中でおいしい県産品を楽しむという、特別な時間を提供できることを伝えられると思う」と手応え。完成映像は、本年度中に「食かけるプロジェクト」の英語版公式サイトで公開され、世界へ発信されるという。

 来秋のツアー実現を目指し、同グループは大手旅行会社などと話し合いを始めている。「桜のライトアップは時期が短いが、リンゴは早生種から晩生種まで収穫が続くので、長い期間ライトアップできる。少しでも地域の魅力アップを図り、最終的にはリンゴ生産の後継者育成につなげていければ」と土岐さんは話している。

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