五島「阿古木古道」復活 潜伏キリシタンに思いはせ歩く イナッショ祭り

復活した阿古木古道を歩く参加者=五島市奈留町

 五島市奈留島で、かつて潜伏キリシタンが使っていた古道を復活させた「阿古木(あこぎ)古道」の開道式が3日、現地であった。長崎県内外の関係者が、ひそかに信仰を守り抜いた当時の人たちに思いをはせながら山道を歩いた。
 世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を地域おこしに生かそうと開かれたイベント「イナッショ祭り」(実行委主催)の一環。
 潜伏キリシタンの子孫で奈留島在住の柿森和年さん(77)によると、同島は、キリスト教が禁じられていた江戸時代の1800年ごろ、長崎市外海地区などの潜伏キリシタンが移住。73年に禁教令が解かれた後も、潜伏時代の信仰形式を守り続けた人が多かった。
 古道は集落間を結び、幕府や藩に気づかれないよう、洗礼式(お授け)やお大夜(だいや)(クリスマス)といった信仰の集まりに使った。約50年前まで通学路など生活道路としても利用していたが、車が通る別の道路ができたため廃道になった。倒木が道をふさぎ、雑草が生い茂っていた。
 柿森さんらは、巡礼道として活用しようと、古道の復活を計画。阿古木地区から柿浦地区までの約1.7キロで幅は1~2メートル。今春から夏にかけ、地元町内会などの協力を得て、倒木や雑草を取り除くなどした。
 3日は、計画を進めてきた「禁教期のキリシタン研究会」会長の髙祖敏明上智大名誉教授や、デ・ルカ・レンゾ日本二十六聖人記念館副館長ら県内外の約30人が歩き、記念碑を除幕した。長崎市の女性(69)は「当時の暮らしや苦労を想像し、五感で感じながら歩いた」と話した。柿森さんは「潜伏キリシタンが残した遺産として、協力を得ながら保存したい。自然豊かな道。外国人にも歩いてほしい」と語った。
 近くの田岸集会所では、同研究会などが今年8月、奈留島で51年ぶりに行った潜伏キリシタンの洗礼式を収録した動画を公開。柿森さんらが資料を収集し、子孫への聞き取りなどを通じて忠実に再現したもようを参加者が見入った。
 4日は午後2時半から、同市末広町の福江教会で洗礼式の動画の公開や講演、バイオリニスト大迫淳英さんのミニコンサートがある。

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