人気とんでん、大ヒットの埼玉で最多36店に拡大 関東進出の足掛かりとなり、一大和食チェーンへ成長 創業55周年、社長が埼玉に特別な思い あす5日まで“創業祭”人気メニューが特別価格

創業から55周年の節目を迎える「とんでん」

 北海道と関東1都4県で和食レストラン「北海道生まれ和食処とんでん」を展開するとんでんホールディングス(HD)=本社・北海道恵庭市=は、1978年に浦和市(現さいたま市)に第1号店を構えて今年で45年、創業から55周年の節目を迎える。原材料費などの高騰で外食産業を取り巻く環境は依然厳しいが、長尾治人社長(60)は「昔から当店には、本物の味や落ち着いた雰囲気を求めて来店されるお客さまが多い。手を抜かずに安心してご利用いただける店づくりで、他社との差別化を図りたい」と創業以来の信念を貫いている。

 とんでんは1968年、「うまくて安くて腹いっぱい」を合言葉に札幌で10円まんじゅうの製造・販売を始めた。73年にすし部門を開設し「とんでん鮨(ずし)」をオープン。すし中心のチェーン展開は非常識とされた時代に、取引があった青森の金融機関からの紹介で78年に浦和へ進出した。

 すぐに北海道産の新鮮な食材を使ったすしやそば、天ぷらなどのメニューが埼玉で大ヒット。名物の「ジャンボ茶わんむし」もこの年に生まれた。現在は北海道や埼玉、千葉、東京などに計96店舗、従業員数約3300人、年商152億円(2023年3月期)の一大和食チェーンへと成長した。

 社名(店名)の「とんでん」は北海道開拓の象徴「屯田兵」に由来。関東進出の足掛かりとなった埼玉には特別な思い入れがあり、県内に最も多い36店舗を構えている。

 長尾社長は当時、浦和市(現さいたま市南区)太田窪の第1号店で住み込みのアルバイトとして働いていた。今でも親子三代で利用する常連客が多く、「楽しそうな家族連れの笑顔が今でも忘れられない」と振り返る。周囲が心配する中、「全国100店舗構想」の自信にもつながった。

 経営者となった今でもたまに一般客の立場で店を利用することがあり、「隣の席から聞こえてくる楽しそうな会話が一番の活力」とうれしそうに語る。

 コロナ禍で一部店舗に配膳ロボットを試験的に導入したが、それも空いた時間に丁寧な接客をするための一手段。おもてなしの精神は変わらず、広めの玄関スロープや飲食チェーンでは初のAED(自動体外式除細動器)を12年から全店舗に設置している。

 55周年を記念して、3日から5日は年に一度の「創業祭」を行う。うな重やお膳など人気メニューを特別価格で提供するなど五つの企画を用意。「50年、100年と地域に支持されるよう調理も接客も心を込めて対応したい」とほほ笑んだ。

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