「空飛ぶパトカー」青森県警航空隊 12月発足40周年 無事故1万1887時間 「県民の安全 守り続ける」

県警ヘリ「はくちょう」。現在使用されている機体は2代目となる(県警提供)
「今年は山岳遭難の救助要請が多い。目立つ色の服を着て、タオルを振ってくれれば上空から見つけやすい」と語る山田運航係長

 青森県警航空隊は今年12月、発足40周年を迎える。無事故飛行を続け、これまでの総飛行時間は1万1887時間。県内全域を活動区域に、「空飛ぶパトカー」として上空から県民の安全を守っている。

 同隊は1983年12月に発足した。青森空港に拠点を構え、現在は船水信宏隊長の下、操縦担当の運航係3人、機体整備などを担う整備係5人が在籍。機体は2005年に導入した最高時速259キロのヘリ「はくちょう」(15人乗り)を使用している。

 21年の下北豪雨や昨年の津軽豪雨などの災害、急増する山岳遭難、祭りの雑踏警備、他県への支援…。業務は多岐にわたり、年平均で300時間飛行する。今年8月には県内で近年例がない白昼のカーチェイスでも力を発揮した。

 岩手県内で強盗殺人未遂事件を起こした指名手配犯の男が車で青森県を逃走中-。8月21日、緊急配備を告げる無線が流れた。「出動だ」。隊員たちは次々と流れてくる無線連絡を聞きながら離陸態勢を整え、操縦士の山田剛輝運航係長(40)ら4人がすぐさま飛び立った。

 逃走車両を追尾するパトカーからの情報を基に七戸町の上空へ向かうと、1台の白い軽自動車が目についた。「1台だけスピードが違った。あんな速度は見たことがない」と山田係長。

 ナンバープレートから犯人の車だと特定し、追跡を開始した。機首に搭載したカメラで上空からの映像をリアルタイム送信できる「ヘリコプターテレビシステム」を活用。暴走する車の空撮映像は各捜査員が携帯する小型端末で共有された。無線をやりとりする県警通信指令課、地上から追跡した捜査車両、そして航空隊。3者が連携を取って車の動きを先読みし、1時間以上にわたる追跡の末、青森市内での容疑者確保につなげた。

 山田係長は「道路形状を先読みして、容疑者を見失わないことが重要。上空からの日々のパトロールで道を覚え、休日は車に乗って道路を走り、上空との見え方の違いを確認している。今回は蓄えた知識が生きた」と語る。

 山田係長は元白バイ隊員。「航空隊は、支援を求めている場所に素早く駆け付けられる。そこが光って見えた」と2011年に県警の公募に手を挙げた。県警が養成した初の操縦士となり、これまでの飛行時間は千時間を優に超える。「航空隊がひとたび事故を起こせば、パトカー1台の事故以上に県民の信頼を一気に失う。無事故飛行を続けなければならない」。気を引き締め、今日も操縦かんを握る。

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