ものまね芸人JP「役者は想定内だった」、我流の役作り明かす

2022年、コロナ濃厚接触者となった松本人志の代わりに出演した『ワイドナショー』でブレイクした、ものまね芸人・JP。現在は、「警察庁内の経費削減」の特別命令を受け、お金を切り口に事件を解決していくドラマ『トクメイ!警視庁特別会計係』(カンテレ)にレギュラー出演中だ。

連続ドラマ『トクメイ!警視庁特別会計係』(カンテレ)に出演している、ものまね芸人・JP

ことあるごとに「経費削減」を謳う特別会計係・一円(橋本環奈)に振り回される湯川哲郎(沢村一樹)率いる「湯川班」の一員で、「実は頭脳派」という少しおいしい役所。数え切れないほどのものまねレパートリーを持つJPだが、俳優業にはどのように向き合っているのか?「ものまね芸人」だからこその役作りなど話を訊いた。

■ 役者をやることは想定内だった(JP)

──これまでも何度かドラマに出演されていますが、今回はレギュラー出演、そして「湯川班」のメンバーというメインキャストでの抜擢です。

もう本当に感謝でございます。でも、もし自分がやるんだったら、医療系、弁護士裁判系・・・あと刑事ドラマはできれば当たりたくないなって思ってたんですよ。専門用語のセリフが多いじゃないですか。僕みたいな役者のスキルもない、基礎もできてない人間は大変だろうなぁって思ってたら、こんなド真ん中の役で(笑)。

──刑事ドラマとしては過去1度、犯人役で出演されていますね。

刑事ドラマで一番難しいのは「慣れを見せないといけない」ことだと思っていて。刑事が血や死体を見るのは日常茶飯事ですけど、実際には体験できないじゃないですか。それを当たり前のようにこなさないといけない。

初めて刑事ドラマに出させていただいたときに、周りの方たちが「普段から刑事やってます?」ってくらいナチュラルにやってらっしゃったんで。非日常的な体験をされているからこそできる「慣れ」をそこで感じましたね。

──JPさんはご自身の芸歴のなかで「役者」という挑戦は予想外のことだったんでしょうか。

いや、全然想定内でした。僕は今、夢がたくさんがあるんですけど、それを叶えるためのステップアップとして芝居をやりたいなっていうのはずっとありましたね。でも役者という仕事をするには、なによりも結果を出さないといけない。じゃあその結果を何で出すか?っていったら、僕の本業はモノマネ芸人じゃないですか。

今いる事務所(研音)は、芸人は僕ひとりでそもそも役者さんの事務所だからこそ、ありがたいことに以前もこういった仕事を単発でいただけたりしてたんです。でも、ものまね芸人として一生やっていきたい人間が、お笑いで結果を出す前に役者の仕事をいただいていたことがコンプレックスでしたね。

ドラマの役作りについて話すJP

──そして2022年、『ワイドナショー』で松本人志さんの代役で出演し、ブレイクされます。

事務所には「芸人として結果を出したいです」と言っていたので、うれしかったですね。そこで1つ夢が叶ったので、次のステップに進むために、こういったお芝居もさせていただきたいなと。

■ 我流の役作り、地盤にはやはり「ものまね」?

──「役者」と「ものまね」、作り込む点は同じだと思うのですが、ものまねの場合、松本人志さんや香取慎吾さんという「対象」となる方がいらっしゃいますが、役者はほぼ架空の人物を演じることになりますよね。

それに関しては、わりと自分のなかでは簡単だったんです。いろんな人をものまねさせていただくので、設定とかをいただいたときに、わりと周囲に近い人はいるんですよ。僕の演じる大竹浩介って人は年齢はこれくらい、頭は切れ者、でも喧嘩とかは弱くて皮肉とかを言う天邪鬼な人・・・っていうのを考えたとき、僕のなかでは設楽統(バナナマン)さんだなって。

──役者ではなく、まさかの芸人なんですね!

最初は雰囲気とかイメージをそこから作っていった感じでしたね。無人島と一緒ですけど、与えられた状況やものだけで生活しないといけないわけじゃないですか。あわよくば、筏を作って脱出したり。今後もし役者のお仕事をいただけたとしても、得意としているものまねのなかでサンプルを作って・・・生意気にも、僕はこういった作り方になると思います。

──架空ではなく、しっかりとイメージしている方がいるということが意外でした。「役者JP」にも、地盤にはものまねがあるんですね。

そうですね。やるまではもっと遠い存在、サッカーと野球くらい違うんかなって思っていたんですけど、今はアメフトとラグビーみたいな距離感かなっていう感じです。

芸歴20年目、現在40歳のJP

──普段はピン芸人で活動されているJPさんですが、今回はチームの一員として撮影に臨まれていると思います。周りの方から感化されることはありますか。

芝居だけでなく、普段の立ち回りにも思うことはめちゃくちゃありますね。でもやっぱり橋本(環奈)さんと前田(拳太郎)くんの若い2人が堂々としていて、重鎮たちとひょうひょうと渡り合ってるのがすごいなって。僕自身、芝居は1年生だと思っているので、年上年下関係なく盗めるものは盗んで。リスペクトさせていただける方ばかりです。

──ドラマの発表会見では「フワフワしている」とのコメントもありましたが、撮影が進むにつれて感覚は変わってきましたか?

やっぱりみんなで作っていくものなので、同じ舟に乗っている以上はみんなで助け合おうという意識になってきましたね。あと、出演者の方から本当に信じられないくらいの差し入れがあるんですよ!この間はピザ釜が来てましたし。こういったことも、演者だけでなく、表も裏も制作の人全員に楽しんでいただくっていう気配りを感じますし、本当に良い現場です。僕はロケでもらったお菓子をそのまま差し入れとして横流ししていますけど(笑)。

──現場でも経費削減をされているんですね(笑)。ドラマでもそういった「無駄を無くす」という旨のセリフがよく出てきますが、一見無駄だと思うことからもヒントが生まれ、事件解決に繋がる糸口になっていることも多々あります。JPさんのこれまでの芸人人生で、削減せずにやってきてよかったなと思うことはありますか。

自分のなかでは、これまでに無駄なことはなかったなって。けど、これって結果が出たときに思えることで、それまでは「これ、合ってんのかな?」って、やっぱりどんなことでも不安でしたね。成功って言ったらそんなえらいもんじゃないんですけど、結果がでたときに初めて「無駄じゃなかった」って思えるというか。

──なるほど。

実際38歳でブレイクして、そりゃもっと早くブレイクするに越したことなかったんですけど、そんなこと言ったって仕方ない。人間平等に与えられてるものって時間だと思うので、ここからがスタート、そしてこの38年があったからこそのエピソードもありますし。結局は「やめずに続けること」が一番の経費削減じゃないですかね。

「これ(ポスター)片手に関西に乗り込みましたよ〜!」と、番宣にも力の入るJP

──ドラマの撮影も中盤に入っているかと思います。今回の「役者JP」としての経験が、今後モノマネをやっていくなかで変化はありそうですか?

強いて言うなら・・・(ポスターを見ながら)ここにいるメンバーのモノマネが、新ネタとしてできるようになったってことですかね。一応全員できますけど、ドラマが終わってからしかやりませんよ(笑)。今はドラマの撮影に集中します!

出演者はほかに、橋本環奈、沢村一樹、松本まりか、前田拳太郎、徳重聡、佐藤二朗らが名を連ねる『トクメイ!警視庁特別会計係』(カンテレ)は現在、毎週月曜・夜10時より放送中(全11話)。

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