高杉晋作への憧れ、司馬遼太郎「世に棲む日日」の魅力 いつも心の中にある辞世の歌 サーラ社長が語る

世に棲む日日

司馬遼太郎による長編小説「世に棲む日日」。吉田松陰と高杉晋作の2人を中心にした青春歴史小説です。「高杉晋作は男気があって魅力的」。そう語るのは、豊橋市に本社を構える「サーラコーポレーション」の神野吾郎社長です。地元を愛しながら、世界を変えようとした先人への思いを語ります。

神野吾郎社長

――「世に棲む日日」との出合いを教えてください。

最初に読んだのは、高校時代だと思います。当時、庄司薫の青春小説に没頭していました。その後、何かの拍子に「世に棲む日日」を読み始めたんですよね。自分よりも少し上の年代の人たちが、江戸末期に命を懸けて日本の未来のために戦う姿に胸を打たれたんです。

――物語の前半は吉田松陰、後半は高杉晋作が主人公ですね。どちらが好きですか。

僕は完全に高杉晋作派です。高杉晋作に憧れています。とにかく遊ぶことが大好きな風流人です。それでも、世の中のために命を懸けて戦いました。そういった男気のある魅力的な人ですね。

高杉晋作が筆を落とすシーンが心に残る

印象に残ったシーン

――印象に残っているシーンについて教えてください。

高杉晋作が辞世の歌を書きはじめたシーンです。20代後半で亡くなりますが、「おもしろき こともなき世を おもしろく」とつづったあとに、筆を落として、下の句を続けられないんです。その後、女性の歌人である野村望東尼さんが「すみなすものは心なりけり」と後半の句をつけて1つの歌が完成します。それは最高のシーンでしたね。

「おもしろき こともなき世を おもしろく」

常に心にある高杉晋作の言葉

高杉晋作の28年弱の短い命でしたが、懸命に生きるんですよね。世の中は難しいことばかりです。上手くいかないこともたくさんありますが、どうやっておもしろく生きるのか。「困難も心の持ち方によって楽しいものになるぞ」と。「おもしろき こともなき世を おもしろく」は心の中に常にある言葉です。

若き日々のパワーがよみがえる

明治時代の偉人と現代の人を比較して考えることも

――改めて読み返してみて、いかがでしょうか。

10代・20代の若い頃とは違って、60代になって読み直すと、若いときのパワーがよみがえるような気持ちになります。難しい現代から、未来に向けて変革しなくてはいけません。明治時代をつくってきた人たちと、今を生きる人間を比較して「どうなのか」と考えることはあります。

自分のルーツや故郷から世界を見据える先人たち

――高杉晋作も吉田松陰も、地元を愛して地元を変えて日本全体を動かそうとしましたね。

高杉晋作は特に、長州をすごく愛して長州から世界を見ていました。坂本龍馬など、自分のルーツや自分の故郷を愛しながら、日本全体、そして世界というスケールで考えていたのではないかと思います。

――本を好きになったきっかけは何ですか。

読書の魅力を話す神野社長

思い返すと、子どものときに読んだ森村桂の旅行記「天国にいちばん近い島」がきっかけかと思います。目の前の世界がパッと広がったんです。ほかにはSF作家の星新一のショートショートは科学的な新発見が多くて、とても興味深かったですね。

いろんな経験をしたいし、知りたいですが、時間と制限があります。本は時間や制限を超えて体験できて、没頭できます。そこに魅力があると思います。

(取材協力:代表取締役社長 兼 グループ代表・CEO 神野吾郎さん)

■世に棲む日日 著者:司馬遼太郎
江戸時代後期の長州藩士・吉田松陰と、奇兵隊を組織した高杉晋作を中心に、変革期を生き抜く若者たちの青春を描き出す。全4冊の長編小説。

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