「追い炊きの風呂に入る仲ではないなと」MOROHAアフロや呉城久美ら登壇『さよなら ほやマン』爆笑舞台挨拶【全国公開中】

『さよなら ほやマン』©2023 SIGLO/OFFICE SHIROUS/Rooftop/LONGRIDE

『さよなら ほやマン』初日舞台挨拶

人気アーティストMOROHAのアフロが初主演した映画『さよなら ほやマン』が2023年11月3日(金・祝)、劇場公開を記念して初日舞台挨拶を開催。アフロ、呉城久美、黒崎煌代、津田寛治のキャスト陣と監督の庄司輝秋が新宿ピカデリーに登壇した。

さらに『さよなら ほやマン』の共同プロデューサーである株式会社シグロの山上徹二郎が、この度「糸賀一雄記念賞」を受賞。映画をはじめ文化芸術分野におけるバリアフリー化を長年にわたり主導し推進してきた功績を称え贈られる福祉分野の賞となり、本作のバリアフリー版制作にあたっても、目が見えない、見えにくい人向けの音声ガイド原稿をディスクライバーと一緒に庄司輝秋監督が書き下ろし、登場人物である美晴の目線でヒロインの呉城久美が音声ガイドの読み上げ担当するという、初の試みにも挑戦している。

「糸賀一雄記念賞」とは人材の発掘や育成をより進めるために、「障害福祉に関する取り組み」のみならず「障害者などの生きづらさがある人に関する取り組み」等、障害福祉の分野にとどまらず顕著な活躍をされている個人・団体に「糸賀一雄記念賞」を授与している。

「あなたにしかできない役です、と渡された台本に『ほやマン』と…」

劇中の“ほやマン”コスチュームに身を包んで登場し会場を沸かせたアフロ。マスク姿で「視界が非常に悪くて、マイクのスイッチを入れるのもままならず……」とボヤきつつも、満員の客席を目にして「嬉しいです!」と満面の笑みを浮かべた。

この“ほやマン”の姿で映画のプロモーションに勤しんできたアフロだが、そのインパクトの強さゆえ、映画の内容とのギャップの大きさで宣伝活動に苦労したことも多かった様子。「これを着ているとすぐ『B級だな』みたいな顔をされるんです……」と苦笑いを浮かべるが、それでも「映画を観てくれた人の感想が、このほやマンスーツを脱がせてくれて、SNSなどを通じて、この映画の本当の姿が晒されていくのを感じて嬉しく思っています」と語った。

本作が長編初監督作となった庄司監督も“ほやマン”スーツと映画の内容の激しいギャップについて触れつつ、「『思っていた映画と違う』とすごく言われるんですけど、それは前向きな捉え方で嬉しく思っています。同時に今日、来てくださったみなさんも、まだこの映画どういうものなのか? 海のものなのか山のものなのかもわからない状態だと思います。いや、たぶん海のものではあるんですけど……(笑)。どういう内容かわからない状態で、僕らの宣伝を見たり、アフロさんや呉城さんの活動、黒崎くんのいまの活躍、そして津田さんの存在感というものに賭けて来てくださったんじゃないかと思いますが、そこを裏切らない作品になっていると思います」と、自信をもって作品を送り出す。

アフロにとっては本作が役者としての映画初出演にして初主演となったわけだが、「ずっと映画の仕事している方が、僕のライブを見て『絶対に映画に向いてるよ』と言ってくれるんですけど、一向に仕事はくれなかったんですね(苦笑)。全然来ないなと思っていたところに、ようやく主役で『あなたにしかできない役です』と渡された台本にデカデカと『ほやマン』と書いてあって、『そうか、俺の役者としての最初の大きな仕事は“ほやマン”か……』と思いました」と最初の印象を明かす。

これに対し庄司監督は「悪いですか(笑)?」と抗議。アフロは「台本を読んで中身に魅了されて、人間ドラマだったので、自分にオファーが来た理由がよくわかりました」と振り返った。

「ズケズケと俺の役について言ってきて…」

自身が演じたアキラの役作りについて、アフロは「まず台本を読んでなり切って、リリック(歌詞)を書いたりしました。一度、本業に持ち帰って人間性をラップすることで噛みくだいたり、船舶の免許を取ったり、素潜りのスクールにも行ったりしました」と、心身共にアキラになり切っていったプロセスを明かした。

黒崎煌代は現在放送中のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」でも大きな注目を集めているが、「(放送は)朝ドラが先ですけど、初めてのお芝居、初めての現場はこの『さよなら ほやマン』でした」と明かす。最初にアフロと兄弟の役と聞いた時は「嬉しかったですけど、大丈夫かな? と思いました。人生の熱量が……自分が横にいられるのかな? と思いました」と述懐。そして、実際に撮影に臨んだ際の心境を尋ねられると、あっさりと「大丈夫でした」と即答し大物ぶりを感じさせた。

ちなみに、撮影現場ではアフロと黒崎で役やシーンについて意見をぶつけ合うことも多かったそう。アフロは「年はひと回り以上、僕のほうが上ですけど、(黒崎くんは)映画にずっと向き合って生きてきて、俺よりたくさん知っているので、ズケズケと俺の役について言ってきて……」と、黒崎の遠慮のない物言いを暴露。「そうやって、言い合える関係性を作れてよかったです」と感謝を口にするが、黒崎は「あれはディスカッションです!(自分の)印象が悪くなるじゃないですか!(苦笑)」と、あくまで穏健な話し合いだったと釈明し会場は笑いに包まれた。

「急に2人がアフロくんに対する愚痴を言い出して…」

呉城久美は、アフロの印象について「ラッパーってことで気構えてしまって『どんな人が来るんだろう?』と怯えて行ったら、私が想像していたラッパー像とは全然外れた方でした。とにかくいい人! 空気を作ってくれるし、みんなにものをいろいろ配ってくれるんですよ」と、アフロが現場の和やかな空気を生み出していたと明かす。

津田寛治は兄弟の叔父を演じたが、島で行なわれた撮影の雰囲気について「廃校になった学校を合宿所のようにしてスタッフさんも泊まっていたんですけど、理科の実験室みたいなところで料理を作って、隣の音楽室でみんな並んで食べる感じで、料理を作ってくれる方の中に監督のお母さんがいたり、キャストの送り迎えを監督のお父さんがしてくださったり、本当に監督の家族みんなでつくっている感じで、僕らも監督の家族とか親戚の気持ちで、“アットホーム”というか、むしろ“ホーム”でした」と笑顔で明かした。

そんな津田だが、現場でのアフロ、呉城、黒崎の様子について「3人ともメチャクチャいい人だったんですけど、アフロくんが抜けると、急に2人がアフロくんに対する愚痴を言い出して……」と爆弾発言。これには黒崎も大慌ての様子だったが、原因は「お風呂」にあったようで、アフロが先にお風呂に入った際、2人のためにわざわざお湯をそのままにしていたそうで、呉城は「アフロさんが先に終わった日があって、『いま、風呂入ってきた。ズケズケと俺の役について言ってきて……」』って……。いや、追い炊きの風呂に入る仲ではないなと」と状況を説明。アフロさんは「それは直接、言われました。『さすがに要らないです』って(笑)」と明かし、会場は再び爆笑に包まれていた。

「もがくことが輝いて見える映画を作りたくて」

さらにこの日は、映画の中で不動産屋の男を演じた園山敬介も客席から呼び込まれ登壇。園山は当初、台本の主演に名前のある“アフロ”がMOROHAのアフロだと認識していなかったそうで、「カタカナでアフロって書いてあって、どなただろう? パパイヤ鈴木さんとかアフロの方かと……。MOROHAは知っていたんですけど、“MOROHAのアフロさん”なんだ! と、その場で知ってビックリしました」と明かした。

そして舞台挨拶の最後にアフロは、この日が『ゴジラ-1.0』の公開日であることを踏まえ「ゴジラとほやマンの戦いに、ほやマンが勝つと踏んでみなさん来てくださったと信じています」と語り、「どうしても、この映画を知ってもらいたいと思うと、このほやマンスーツを着て走り回らなくちゃいけなくて、逆にそのせいで遠のいた人もいるかもしれないけど、その遠のいた人を引き寄せてくれるのは、みなさんの感想や口コミだと思います。見終わって心動くものがあったらご協力お願いします。それよりも何よりまず今日、この場所を選んでくださってありがとうございます!」と熱い気持ちを吐露。

庄司監督は「人生ってなかなか自分の思い通りにならないことだらけだなと最近、特に思うようになりました。急に病気になったり、事故に遭ったり、震災が起きたり、紛争が起きたり、自分でコントロールできないものの中で、どうやって自分の人生を掴み直すかが大事だと思っていて、それは、もがくことと近いんですけど、もがくことが輝いて見える映画を作りたくて、それができるのがこの3人と津田さんだと思ってキャスティングして、この映画はできました。心の中で『自分なんてこんなもんかな』と思う心の疼きがあったら、ぜひ映画をご覧いただいて、少しでも背中を押せたらと思っています」と語り掛け、会場は温かい拍手に包まれた。

『さよなら ほやマン』は新宿ピカデリーほか全国公開中

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