約20年にわたり「演者」として表舞台の第一線で走り続ける傍ら、最近では演出家としてもその名を轟かせる城田優。作り手としての喜びを強く感じているそうだが、一体彼は何に惹かれて「裏方」の世界にのめり込むのだろうか?
俳優として、また近年では演出家としても活躍する城田優
今回は、城田が出演に加え、演出を手がけるクリスマスコンサート『billboard classics× SNOOPY「Magical Christmas Night」』の開催にちなんで、改めて彼が考える「演出家」について、そして彼が「この上ない贅沢」だと語る演出の魅力について、語ってもらった。
写真/バンリ
■ 「具現化していくプロセスがすごく楽しくて」
──SNOOPYのオーケストラコンサートへの出演は2023年で4年目を迎えるそうですが、今回はボーカルとしてだけではなく、演出にも携わられるとのことで。
はい。3年間出演させていただいたなかで、「ここはもう少しこうできたらおもしろいな」とか、いちプレイヤーではありながらも演出目線のアイデアを抱き続けていた部分がありました。
そして今回は念願叶って、演出も担当させていただけることになりまして・・・PEANUTSの世界観をふんだんに盛り込みながらも、おそらくみなさんがこれまでのコンサートでは見たことがないものをお見せできるのではないかと思っています。
2023年で4年目を迎える『Magical Christmas Night』、城田は初年度からゲストボーカルとして携わってきた
──2022年の公演を観させていただいたのですが、クラシカルなムードにクリスマスのホリデイ感がプラスされ、観客をやさしく包み込んでくれるような荘厳なパフォーマンスに始終うっとりしていました。今回はそんな雰囲気やセットリストもガラリと変わる予定なのでしょうか?
過去3年間はジャズやクリスマスの名曲がメインでしたが、今回はガラッと一新して、誰もが一度は聞いたことがあるであろう洋楽や邦楽を散りばめ、より楽しんでもらえるようポップスに寄っていくつもりです。
僕もメインボーカリストとして8曲以上歌いますし、ゲストのCrystal Cayさん、清水美依紗さんとのデュエットや彼女たちのオリジナルソングも存分に楽しんでもらえるセットリストになっています。もちろん、PEANUTSにまつわる名曲もしっかりお届けしますよ。
とはいえ、オーケストレーションはしっかりとあるので、クラシック好きな方も、また「クラシックコンサートが苦手なんだよね」という人にも楽しんでもらえると思います。どんなエンタテインメント好きな方々が来ても、説明なしで没入できる世界観というのをご用意するので、百聞は一見にしかず!観ていただきたいなと思いますね。
「説明なしで没入できる世界観をご用意します」と意気込む城田
──このお話もそうですが、ここ数年、演出家・城田優に対するインタビューが増えている気がしていまして。
そうなんです。舞台やミュージカルの演出は僕の性に合っているのか、自身の感触としてはお客さまからも受け入れていただいてもらっているし、手応えは感じます。
──具体的に演出のどういった部分が「性に合っている」と感じますか?
自分の頭のなかで構想されていたものが、可視化されていく過程とか、各プランナーの方々に「この作品を、こう作りたいんです」と伝えると、次に「こういう照明にしたいんです」とプランが上がってきたりとか・・・(自分が作りたいものを)具現化していくプロセスがすごく楽しくて。
また、そこに生きた俳優たちが実際に心を動かしてセリフを、歌を歌う。その全体像のディレクションができるというのはこの上ない贅沢ですし、そこに僕自身が役者の1人として入ってピースを完成させることができる。
■ 「俳優を20年やってきたからこそできる演出」
──先日幕を閉じた『ファントム』を拝見しても感じましたが、演出家・城田優は、どこをどう魅せたらダイナミックに客席に届けられるのか、熟知してらっしゃると感じました。
やはり「届ける・シェアをする」ということは常に考えていますし、これはキャストのみんなにも言っています。実際、本番前にも円陣を組んで「レッツシェア」とやっているのですが、どんな物語であろうと演じる僕らがその世界を信じさせなければ始まらないんです。『ファントム』の場合だと「これがパリなんだよ」「オペラ座なんだよ」ということが、お客さんに前のめりになってもらってわかってもらわないと、(作品自体にも)エンジンがかかっていかない。
ミュージカル『ファントム』開幕前は「考えると手汗をかく」と話していた城田
僕らが独りよがりの芝居をしていても、歌を歌っていても届かなければ意味がないので、まずは届ける・シェアをするということを一番大事にしています。技術面はさておき、パッションにおいて。だから、キャストに対しては「とにかくみんなが楽しんで、誇りを持って演じてください」ということが一番最初のディレクションですね。
──城田さんが考える「演出家」、そして自身の強みを改めてお聞きしてもいいですか?
そうですね、やはり俳優を20年やってきたからこそできる演出だとは思います。もちろん才能を持ち合わせた演出家はたくさんいらっしゃるのですが、僕の強みは演じる苦労や難しさを誰よりも体感しているというところ。
「人によっては『演出がいい』『ファントムがいい』『シャンドンがいい』と、評価が分かれるくらいを目指していて、実際そうなった感覚はある」と語る城田
海外ではミュージカル『ハミルトン』(2015年)で脚本・作曲・作詞・主演という偉業を達成して、脚光を浴びたリン=マニュエル・ミランダさんという方がいらっしゃいます。その方は自分の感覚で新しいことをやってのけてしまう方です。
ラップでミュージカルを作って、世界中が驚いて、どこまでが彼の計算なのか偶然なのか分からないけれど、その頃、アメリカの物語には、白人しか出演していなかったところを、黒人や南米人を混ぜるということが、素晴らしいですよね。
──衝撃でしたね。異例尽くしで大ヒットに繋がるという。
僕が頑張る事で、どんどん後に続く人が出てきてくれたらいいなと思っています。「自分にはできない」ではなく、「自分もやってみよう」というマインドになって欲しいです。
自分の思い描く理想、新しいことを臆することなく挑戦して欲しい。評価や世間の目に、必要以上に囚われてほしくないと思いますね。
■ 「僕がやってることは、16歳からなにも変わっていない」
──城田さんは5〜10年前はメディアなどで「最近よく舞台されてますよね」と言われていたなか、最近では「完全に舞台の人」にパブリックイメージが変わってきているのではないかなと思うのです。そのあたりの変化はご自身でも感じられますか?
感じますね。でも僕がやってることは、実はずっと変わって無くて。16歳で初ミュージカル、そこから毎年1本はミュージカルやってるんです。
城田は「パブリックイメージは気にしていない」と言う
今後もやりたいこととやるべきことやって、最終的にそれをみなさんがどう思うか。僕は肩書きを「エンタテイナー」としているのもそうなんですけど、俳優と思いたい人はそう思ったらいいし、歌手と思いたい人は思ったらいい。アイドルやクリエイターだと思いたければ思ってもらったらいい。唯一無二の存在でありたいし、みなさんにも「自分は自分の色でいいんだ」とあってほしいと思うんです。
「挑戦をしていくこと、その先に新しい景色・出合いがあると思うので」と城田
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城田が出演、そして演出もつとめる『billboard classics× SNOOPY「Magical Christmas Night」』は12月3日、「兵庫県立芸術文化センター」(兵庫県西宮市)にておこなわれ、12月24日には東京でもおこなわれる。ゲストボーカルにはCrystal Kay(兵庫)、清水美依紗(東京)が参加。チケットはS席1万2000円ほか、現在発売中。
billboard classics × SNOOPY 『Magical Christmas Night』
日時:2023年12月3日19:00開演
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール(西宮市高松町2-22)
料金:S席一般1万2000円、S席パートナーシート2万1000円、A席一般9000円、A席パートナーシート1万6000円、U-18席5000円