収穫バイトが就農の入り口に ミカンでIターン続々 愛媛・JAにしうわ

JAにしうわの営農指導員(左)の指導を受けながら摘果作業に励む就農予定者(愛媛県八幡浜市で)

全国有数のミカン産地、愛媛県のJAにしうわ管内で、Iターン就農者が増えている。JAによると、管内の2016~23年度のIターン就農者は30人。このうち特に多いのが収穫のアルバイトに参加していた人で、半数の15人を占める。温州ミカンの単価上昇に加え、収穫アルバイトからの就農を後押しする研修や支援制度を創設したことが、着実な担い手確保につながっている。

ミカン産地では農家の減少が続き、現在は「需要に対して生産量が追い付いていない状況」(県南予地方局)だ。JAの22年産の温州ミカン単価は1キロ347円。10年前と比べて3割上昇し、ここ数年は高止まりが続いている。

松山市出身の40代男性は、就農先を探す過程で18年から3年間、JAのミカン収穫のアルバイトに参加。他品目の産地でもアルバイトをしたが、「温州ミカンは単価が高く、作業予定が組みやすい。アルバイト先の農家から第三者継承を提案され、就農を決めた」と話す。現在は24年4月の就農に向けて、2年間の研修中だ。

研修に手当も 意欲を後押し

研修制度は16年に創設された。就農希望者はアルバイトなどで作業を体験した後、JAの共選役員や地元農家から1、2年かけてミカン作りを教わることができる。JAによると、過去にIターン就農者はほとんどいなかったが、制度ができた16年度以降は25人が就農。23年度には新たに5人が就農を予定している。

研修中の手当も魅力の一つだ。JA管内では、3親等以内に農業者がいないなどの条件に該当する場合に市町とJAが月3万円ずつ助成し、国の補助金と合わせて月20万円ほどの生活費を確保できる。また、アルバイターは無料、研修生は月1万5000円で利用できる宿泊施設もある。

今後の課題は優良農地とミカンを貯蔵する倉庫の確保だ。JAによると、第三者継承で就農する2人を除き、倉庫・農地のめどが立たず研修待機中の就農希望者が9人いる。JAは今後、八幡浜市が作る地域計画も活用し、「農地や倉庫をスムーズに受け渡せるようにしたい」とする。

(溝口恵子)

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