「絶対にプロフェッショナルではない」接触したキャデラックを強く非難するトヨタ技術首脳/WEC最終戦

 トヨタGAZOO Racingのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、WEC世界耐久選手権最終戦バーレーン8時間レースのスタート直後にマイク・コンウェイが見舞われたアクシデントを受け、キャデラックのドライバーであるアール・バンバーを「絶対にプロフェッショナルではない」と強く批判した。

 コンウェイが小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスとシェアした7号車GR010ハイブリッドは、バーレーン8時間レースの最終戦でチームメイトの8号車を上回る成績を収めなければ、ハイパーカー・ドライバー選手権の世界タイトルを獲得するチャンスはなかった。

 だが、オープニングラップの1コーナーで、ブレーキングでタイヤをロックさせたバンバーの2号車キャデラックVシリーズ.Rとの軽い接触に見舞われスピン、大きく順位を落とすことになった。

■「抜こうとしたわけではない」とバンバー

 コンウェイは力走し、可夢偉へとマシンを引き継ぐまでに3番手まで挽回したものの、首位8号車は終始コントロールしながらの走行となり、7号車の逆転タイトルはほとんど不可能なタスクとなった。

「キャデラックが100メートルもタイヤをロックさせているのを見ると、自分がどこにいるのか分からなくなったよ」とバセロン。

「ここはクラブ・レーシング(レース愛好会)なのか? 絶対にプロフェッショナルではない。言葉もない。我々はそれを見た。(ブレーキロックが始まったのは)100メートル手前だった」

「幸い、マシンは大丈夫だった。だが、レースが終わっていたかもしれないんだ。だからあれに対しては言葉もない」

スタート直後に2号車キャデラックVシリーズ.Rから追突を受けスピンした7号車トヨタGR010ハイブリッド

 バセロンのフラストレーションは、ターン1でコースアウトするマシンが続出した第6戦富士6時間レースに続き、2戦連続でスタートが乱れたことでさらに悪化した。なお、この件については予選後のトップ4スタートドライバーズ・ブリーフィングでも、レースディレクターから“クリーンなスタートをするように”との旨が通達されていた。

「富士でも起きたことだ」とバセロン。

「覚えているかどうか分からないが、富士でも我々の2台はコース外に押し出されたんだ」

「そしてまた、ここでもだ。絶対にプロフェッショナルではない」

 バセロンは、2号車キャデラックに科せられた1分間のストップ&ホールド・ペナルティは正当であり、オープニングラップでのドライバーの行動を取り締まるために強力なペナルティを科すべきだと考えている。

「あのレベルでこういうことが起こるのは悲しいことだ」と彼は続ける。

「本当に悲しい。最後の5メートルはホイールがロックしてもいいが、100メートルなんて……クラブ・レーシングだよ」

 コンウェイはこの接触とそれに伴う遅れが、7号車のレースを終わらせ、タイトル獲得の可能性を奪ったと語っている。

「僕らはただレースに勝ちたかったんだ。そのとき、チャンピオンシップについて何かが起こるかもしれなかった」とコンウェイ。

「残念ながら、バンバーは違う考えを持っていて、ターン1で僕たちをアウトに追いやってしまった。それでレースは本当に台無しになってしまったんだ。セーフティカーも出ないなかで、その30秒を埋めることは難しかった。(優勝した8号車とは)ペースがとても似通っていたからだ」

「マシンにもいくつか問題があって、ドライブシャフトセンサーを失ってしまった。それにより、出力を正しく調整するのに苦労したんだ」

「最終的には、安全のために必要以上に低い(出力で)走ることになった。僕らはその面でも戦っていたんだ。だから、それ以外には何もすることができなかった」

2023年WEC第7戦バーレーン8時間レースの暫定表彰式(ハイパーカークラス)

 一方のバンバーは、1コーナーではオーバーテイクを試みず、ロックアップ後の接触も避けようとしたが失敗したと語った。

「タフなスタートだった」とバンバー。

「実際、僕は誰かを追い越そうとしたわけではない。ただブレーキをかけただけだ」

「その後、ブレーキングゾーンの真ん中で、両方のフロントタイヤがロックしてしまった。 左サイド(のマシン)を避けようとしたが、トヨタと当たってしまった」

「彼らのレースに影響を与えたし、明らかに自分たちのレースにも影響を与えてしまったのは残念だ」

「それでも今週末、そして僕らの最初のシーズンには、とっては良いことがたくさんあった。 ル・マンでは3位だったし、僕らには胸を張るべきことがたくさんある」

接触によりペナルティを受けた2号車キャデラック。最終的には11位でフィニッシュした

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