医師死亡…死去した母に焼香した直後悲劇 背後にいた息子、看護師の顔付近から銃を伸ばして発砲「膝を狙ったので殺意ない」 法廷で看護師「医師の胸の高さで、銃は水平だった」…銃声響き「うぅ」と言って後ずさりした医師倒れる

さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

 埼玉県ふじみ野市で昨年1月、医師=当時(44)=が散弾銃で射殺されるなど医療関係者3人が死傷した立てこもり事件で、殺人や殺人未遂などの罪に問われた無職の男(67)の裁判員裁判の第3、4回公判が1、2日、さいたま地裁(小池健治裁判長)で開かれ、事件当日被告人宅を弔問した看護師女性や男性医療相談員=同(32)=らが証人として出廷。女性は被告が構えた散弾銃について「医師の胸の高さで水平だった」と証言した。

 女性は、医師は男の母親が亡くなった翌日、男宅を訪れ遺体が安置された洋間で焼香した後、女性の背後から「肩越しに細長い銃身が伸びてきた」と証言。弁護側はこれまで男が医師の右膝を狙い、殺意はなかったと主張しているが、女性は銃身が自分の目線で医師の胸の高さで水平だったと供述した。破裂音が鳴ると、医師は「うぅ」と言いながら数歩後ずさりし、床に倒れたという。

 催涙スプレーをかけられた男性は事件後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病を発症し、「銃を持っていることを知っていれば」と後悔の念を述べた。

 起訴状などによると、男は昨年1月27日、自宅で散弾銃を発砲して医師を殺害。さらに男性理学療法士=当時(41)=に重傷を負わせ、男性医療相談員に催涙スプレーを放ち、路上にいた別の男性医療相談員=同(42)=に別の散弾銃を放って殺害しようとしたとされる。

© 株式会社埼玉新聞社