Niterra Z高星明誠「チームにもミシュランタイヤにも申し訳ない」トップ走行中の一瞬の通り雨に無念のスピン

 スーパーGT第8戦モビリティリゾートもてぎでの、今季のチャンピオン決定最終決戦。ランキングトップの36号車au TOM’S GR Supraを6ポイント差で追うランキング2位のNiterra MOTUL Zは、ポールポジションからレースでも順調に首位を守っていたが、優勝まで残り5周となった59周目のS字で飛び出し、無念の13位フィニッシュ。チャンピオン、そして優勝を逃す結果となってしまった。レース後半を担当した3号車Niterra Zの高星明誠、そして島田次郎監督に聞いた。

 金曜日のフリー走行から、予選Q1、Q1、そして決勝日のウォームアップ走行と決勝前までのすべてのセッションでトップタイムをマークし、レースも残り5周で優勝が見えていた3号車Niterra MOTUL Z。しかし、残り7周あたりから降り出した雨が徐々に強くなり、残り5周となった59周目、3号車のステアリングを握っていた高星明誠がまさかのスピン。マシンはサンドトラップに入って後輪が空転し、ストップ。この時点で3号車の逆転での年間チャンピオンの可能性が消えた。

59周目に強まった雨にコントロールを失い、スピンしてしまったトップ走行中の3号車Niterra MOTUL Z

 高星はそれまで順調にトップを快走し、トップチェッカーは目前の状況だった。前半スティントよりも硬めのタイヤをセレクトしていた3号車高星は、タイヤがコンディションにしっかりとマッチしていたこともあり、マシンの手応えを十分に感じていたところだった。

「このまま行ってくれたらいいなという思いだったのですけど、雨が降ってきた時に逆にその特性が硬く出てしまって、雨量が多い時に厳しかった」と、レース後に振り返る高星。

「雨が降っていない時の調子が良かった。タイヤが合っていたからこそ、降った時がキツくなってしまって、それでも耐えなきゃいけないシチュエーションだったと思うのですけど、スピンしてしまいました。悔しいです」と続ける。

 63周目のS字二つ目、高星がステアリングを握った3号車は無常のスピンを喫して、サンドトラップにスタック。一瞬の通り雨だったが、その通り雨の一番強いタイミングで、サーキットの中で一番雨が強かったのが、このS字のあたりだった。

 その一番良くないタイミング、そして一番雨量が強くて難しい場所で、高星の3号車はリヤを滑らせてしまった。高星はすぐにカウンターを当てて対応するも、一瞬でコントロールを失ってスピンしてしまった。

「あの前後の周、雨が一番強い時で……残念です。ドライのペースはすごく良かったので、チームにもミシュランタイヤにも申し訳ないと思っています。でももう、起きてしまった。次、来年はまたイチからやり直していきたいと思います」

 ガレージに戻った高星に、3号車Niterra MOTUL Zの島田次郎は、「しょうがない」と言葉をかけるしかなかった。

「感想は……何もないです」と続ける、島田監督。

「(高星に)ちょっと悪かったなと思うのが、飛び出しちゃった時の雨の量が、こっちのストレート側よりS字の方がより降っていて、本当に深刻だったから飛び出しちゃったんですけど、反省すると、そこの認識がこっち(サインガード側)が甘かったのかなと。でも、36号車も同じようにラップタイムを落としていたので、ギャップとしては変わっていなかった。雨の量もあの時がMAXだったと思うので、あの時さえ耐えていれば……」

 島田監督としては、仮に高星のスピンがなくて今回のレースで優勝していたとしても、36号車が2位になっていたことは間違いなく、結果として1ポイント差でチャンピオンを奪われていた状況であることを強調した。

 「7点差でここに来たというのが、まずは厳しい状況だった。相手が強いのは間違いないですけど、今思えば、(予選8番手から9位となった)SUGOなどもったいなかったなと」と島田監督。

「結果的にドライのままだったら1点差で負けていた。本当に口では1点だと言っていても、『本当にその1点(でチャンピオンか否かが別れる)なんだよ』というのをスタッフ全員が感じて、(サクセスウエイトが)厳しいところのレースでもその1点を獲りに行かないといけない」と、厳しい表情で続ける島田監督。

 高星も「せめてもの救いはランキング2位を維持できたというのはあるのですけど、そういう問題ではなくて、優勝を狙っていた。優勝できるチャンスがありながら勝ちきれなかったというのが悔しい」と、肩を落とす。

 スーパーGT最終戦、タイトルがかかりながら3号車にとって、2年連続で逃してしまう悔しい結果となったが、36号車とともに3号車は今季のGT500の中心的存在だったことは間違いない。3号車にとって、改めてスーパーGTでの優勝の難しさ、そして1点の重みを誰よりも噛み締めたシーズンになった。

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